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皮革染料と革。
みなさんこんにちは。
革の染色について今日から書いていきます。
まず大きくお伝えしたいのですが、染色とは染料を用いて色を繊維に染みこませていくことです。
対して顔料による着色は革の表面に色を乗せることです。
これは、工程としては仕上げ作業に属するものとして捉えることができます。
顔料でもある程度革に色素は染みこんでいますが、染料と比較すると色が革表面に乗っているイメージです。
染料では革の地の色が出やすいです。対して顔料はあまり地の色の影響を受けません。
で、ここからしばらくは、「染料」による「染色」の話をしていきます。
ここしばらく革繊維と鞣剤、の反応の話をしていたのですが、染色になって、今度は染料と革繊維の
相互作用の話になってきます。革繊維と染料の間になんらかの結合が生じると「色が染まる」ということに
なります・・・。
なので、染色先になる革の特徴を理解しつつ、それに応じた染料を選択しなければ、革への浸透性、
均染性、適度な濃度、色の堅牢性を持ち得ることはできません。
染料は、種類は色でもちろん示されているのですが、同時に、化学構造、染色基質(染めるものの種類)
染色方法、使用の目的なんかが明記されています。皮革用、というか、薬剤、染料業者さんに革素材に
合う染料を提案してもらいます。染料の化学構造が基質の革と相性のよいものでなくては、染まりません。
皮革染料の大半は、アニオン染料と言われるものです。アニオン?説明しますと、負に荷電したイオンの
ことです。つまり陰イオンです。これに対して陽イオンはカチオンといいます。
染色基質の革に関して。一般にクロム革は陽イオン基質です。タンニン革は陰イオン基質が強めです。
陽イオンは電子を出す性質、陰イオンは電子を入れる性質を持ちます。
つまりお互い結合しやすい性質を持ちます。
ですから、クロム革はアニオン性、タンニン革はカチオン性染料との相性がいいのですが、
タンニン革でも、クロム塩やアルミニウム塩で媒染処理(前処理としておきます)をしておくことで、
染色が可能です。アニオン性酸性染料で染色する場合、この処理をします。
このように、染色の為、革基質に処理を行うこともあります。アニオン染色は革の染色で、
最も多く用いられる染色法で、酸性染料などの合成染料を用いて、色が濃く堅牢な染色が出来ます。
カチオン染色は色調は鮮やかですが、日光堅牢度に弱い場合があります。こちらも合成染料が主流です。
ちなみに合成染料って化学構造としてアゾ系って呼ばれていて、合成染料の大半がこの形状を持ちます。
酸性染料はクロム革の染色に最も広く使用されています。
皮革染料は、酸性染料、直接染料を含むアニオン染料が9割以上で、ほとんどが合成染料。
染料を定着させのるに、どんな素材もそれなりの化学処理はなされているでしょう。
革も同じ。
今日はここまで。
結構、細かくやっていますが、次回から酸性染料~ほかの染料についてもしくみを紹介していきますね!
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革の化学成分。
みなさんこんにちは。
革が化学的に何でできているか、考えたことありますか?
染めたり削ったり切ったりする私の場合、うまくいかない事が多いので、理由を考えるのですが、革を眺めていても
全然分かりません。なので、性質を知る必要があります。その辺りはタンナーさんに聞いたりするのですが、
自分でも調べたり実験したりします。ちょっと面白い話としてご紹介できたらと思います。
革は、ここまで書いてきたように、動物皮の真皮層繊維=コラーゲンの繊維状タンパク質の集まりです。
で、このコラーゲン繊維の集合組織にタンニン、クロム等の鞣剤が結合したものが、ここまでの革です。
その他に、水分、脂肪分、灰分、が含まれています。
重要なのは、鞣した革は普通酸性であるということです。タンニン革でpH3.5~5.5、クロム革ではPH4.5~6
くらいです。中性は通常PH6~8です。
鞣した革は通常多量の酸が含まれています。同時に革表面は強いプラス電荷が働いています。
分子はプラスばかり、マイナスばかりだとお互い反発してくっつきません。なので、電荷を中性に
しなければなりません。分子が離れたりくっ付いたりして、染料、薬剤、油脂、仕上げ剤なんかが、革にちゃんと
馴染んでいきます。
染料の種類で、アニオン、カチオンとか言ったりしますが、これは陰イオン、陽イオンのことです。イオン結合を
スムーズかつ均一にするために革成分を一旦中和すると後の工程が上手くいきます。
そのままの場合、後から加えた染料やその他の物質が革表面にのみ沈着して、革の物理的
性質、見た目に変化を起こしてしまいます。また革の繊維が硬く締まっているので、ほぐしておく必要も
あります。
そういう訳で、中和させるのです。要はちょっとアルカリ性に戻してあげることで、一旦革を柔らかくしたりして、
染料、オイル、仕上げ剤が入りやすい状態に革をしてあげる、という作業です。
通常は、炭酸水素ナトリウムとかギ酸カルシウムなんかの温和なアルカリ塩を中和剤として使用します。硬度の
高い水は普通に洗うだけでかなり中和されるのですが、そうでない場合中和剤を使用します。製革工場の土地の
水質によってその辺りの使い方は違ってきます。
注意する必要があるのは、急激にアルカリ性にふらないことです。中和が過剰に進むと銀浮き
といって銀面が網様層から剥離しやすくなるからです。
ちょっと、生成り=素上げヌメ革をご購入されて染たい、という方々にお伝えですが、よく染める前に色が
均一になるように少し水で塗らす、ということをされるということを聞きます。生成り革も色々あるので、
すべての成分を調べているわけではないので、一概には言えないと思いますが、水で濡らして
湿ったまま時間が経つと、革の毛穴が開いていきます。水道水は基準としてPH5.8~8.6くらい
が安全値として定められていますが、実際測るとPH6~7位のものが多いです。ちょっとアルカリよりなのが
蛇口からでてくる実際値のようです。ちなみに革の中和を行う際、PH7以上は銀浮きのリスクがあります・・・。
ヌメ革の表面が鞣剤の影響で強めの酸性を残しているなら、場合によってはPH高めの水に反応して
急に表面が緩んでしまい毛穴が開いてくる可能性があります。
革に水分を含ませて染料をムラなく入れる、というより、急に濃い色で染めず、最初色を薄く作って
丁寧にだんだん濃い色を染め重ねていく、と毛穴が開かずキレイにムラなく革が染まっていくかと思います。
クラフト用だと、水性塩基性ってやつと、アルコール性っていう染料があります。アルコール性は
水に不溶性なので手早く染めていかないとムラが生じやすいです。ただ、発色がいいし、日光に強いです。
浸透性は低い染料ですが、はっきりした色合いがでます。浸透性は低いのですが、横への広がりは大きい
です。ムラが出やすいとはそういうことですが、表面染着量が多いので色目はハッキリ出ます。
製革では、最終的に色ムラを修正する仕上げ染料として上記を使用したりします。
今日は話としては、革を化学的に中和することで、一旦性質をリセットする、という話をしました。
革は比較的酸には強いです。出来上がっている生成りヌメ革は弱酸性です。急激にアルカリ性に動くと
組織変容を起こします。その辺り、少し知っているといいと思います。
要は、アルカリ溶剤系は、使わない革サンプル等で試すか、薄塗りしてちょっとづづテスト
しつつ使うってのがセーフティーです。あとは、局部的に使う場合はいいのですが、広範囲に
塗布していく場合、どのくらいの面積を一度に作業できるか検討して、塗布濃度を調整するといいでしょう。
今日はこの辺りまでにします。
それでは!
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再鞣しの意義について。
みなさんこんにちは。
写真は工場2階です。現在はあまり使用できていない場所ですが、
味のあるスペースとして活用することを計画中です。
以前はこちらで洗いをかけた革を、伸ばしたりしていました。
ところで今日は「再鞣」の話です。「さいなめし」?また鞣すの?という感じかもしれません。
再鞣は本来主になる鞣しに施す別の鞣し、つまり複合鞣しの意味なんですが、現代の製革では、
特別な仕上げの最初の第一段階目の工程として捉える必要があります。
革の品質、性能に対する市場のリクエストは時代と共にどんどん多様化してきました。
例えば、私が小学生の頃はランドセルの色は黒、赤、紺くらいでした。
が、今はどうでしょう?ランドセルのカラーバリエーションは驚くほど進化しましたよね?
また革製品全般を見ると、色だけでなく、ツヤ、シボ、型押し等質感も実に多種多様です。
ユニークな革を探して他にないような製品作りたい、というのはすべての作り手さんの願いです。
そういうニーズには単一の鞣し方法のみで革に変化をもたらすのは難しいです。
鞣し、は皮タンパク質の化学的安定化といった狭い意味ではなく、革の外観、繊維の理化学的性質に
変化を与えて目的の革を得る、という幅広い意味で捉える必要がでてきました。再鞣しで
やることをまとめると、以下です。
①画一的に大ロットで鞣された革を用途別に選別して、厚み調整をする。
②革の多様化を図り、高付加価値化していくにあたり、新しい特性を革に付与する。
つまり、伸び、柔軟性の物性改良、感触、膨らみ感の官能的品質向上、接着性などの加工特性を
革に付与していく。
③PH調整(中和)~染色、加脂から出来上がる最終製品の革の特徴を考慮して、革下地の準備をする。
④再鞣は、その後の中和~仕上げまでの工程において理化学的物理的影響を与えるものであるから、最適な
再鞣を行えば、革に掛かるストレスを軽減、耐久性のある良質な革質を保持できる。
すいません。ちょっと難しく書いてしまったかもしれません。
皮を完全な製品としての「革」にしていくにあたり、前回までの段階では皮タンパク質を安定化させたに過ぎません。
なので、ここからは種類別に枝分かれさせていく、というイメージです。
で、まずは、製品品種に分けるために革を選別します。
革の適正は、主に銀面(皮の表面)のキズ、肌の状態を外観検査します。
キズが少なく、良好なものは銀付き(フルグレーン)として、
そうでないものは型押しや銀摺り(ガラス張り、ともいいます)革になります。
コレクトグレインとも言われます。ガラスに張り付けて乾燥させてから表面をバフィング(削り、磨き)してから
塗装や生地貼り付け用の革になります。固い革は靴やランドセル、柔らかい革はハンドバックになったり
します。
この選別の適否で、出来上がる革の品質が左右されます。
銀面にキズが少ない革ならそのままその美しい銀面を生かした薄い染色、
キズがもし多いなら、銀面を磨いて滑らか仕上げ、キレイに塗装すれば、キレイなランドセル生地に使えます。
選別は最終製造への出発点となります。
選別された革は、裏削り(シェービング)されます。目的の革に到達するために、厚み、を調整します。
この段階のシェービングは、出来上がる革の厚さを考慮する必要があります。その後の再鞣しや染色、
加脂で革の厚みや密度は微妙に変化します。それらを考慮しつつシェービング調整します。
またシェービング、削ることで皮の重量は変わりますので、中和、再鞣し、染色、加脂、の重量に対しての
レシピが変化してしまいます。なので、薬剤類の計算基礎項目になりますので、その後の製革において
工程管理するときここがおかしいと、上手くいきません。
ただ、重量だけ気をつけてもダメです。厚みが違えば、薬剤や染料類の効果や浸透性が違ってしまう
ので、全重量と表面積の最適なバランスを計算します・・・。それは使う薬剤でも変わります。
皮の重量、面積、厚さ、密度、対して薬剤の量、水分量を管理、目的の革を得るためのレシピを使い分けます。
この辺りから当社業務の領域に入ってきます。中和、再鞣し、染色、加脂、仕上げ、と進んでいきます。
次回は、中和について。
中和?PH?普通レザークラフトなどでは意識しないことですが、個人の方がメーカーになっていく
昨今、クラスト革からの革作りにご興味ある方がいることに個人的には驚いています。それだけみなさんが、
生き物からの素材としての革に対して理解が深まっているのだと感じる今日この頃です。
ある程度下味がついて準備されたお肉で、料理するか、素のお肉からやってみるか、の違いですが、
どっちがいいかとか、その人それぞれです。個人的にどっちがいいかとかは特にないと思います。
ただ、素のお肉的素材なら、ある程度扱い方を知っていたほうが美味しくなります。
そんなことをこれからもお伝えしていきますね。
それでは。
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革の鞣し方、色々。
みなさんこんにちは。
写真は鹿の革です。薄いですがしっかりした繊維の革です。
前回まで、製革の鞣し工程で代表的な、クロム鞣し、植物タンニン鞣しについて書いてきました。
皮の鞣し方は他にもあって今日は、ちょっと簡単にそれぞれの方法をご紹介します。
①合成タンニン鞣し・・・鞣し剤の紹介の記事で、少し書きましたが、軍需物資の利用拡大で皮革製造
が大量になり植物タンニンの需要が追いつかないので、戦時中に合成タンニンが開発されたって話
覚えていらっしゃいますか?
合成タンニンは、そんなニーズから生み出された鞣剤ですが、実際はクロム、植物タンニン、その他の
鞣剤と一緒に使用されることが多いです。皮の鞣し目的はもちろんですが、革の品質改善、他の鞣剤の
助剤として用いられています。ヌメ革の例ですが、ピット漕とドラムを併用して鞣す場合があります。英国式
とかイタリア式とか、それぞれの国のタンナーさんの方法があり、日本のタンナーさんもその方法を
お手本にしていたりします。
準備段階で脱灰したら一旦ドラムで前鞣しをして、サスペンダーというピット漕につけ、その後また
ドラムで鞣していくという方法です。前鞣しで合成タンニンを助剤として使用することで、植物タンニンの
浸透を早めます。この方法でヌメ革の鞣しが一か月程度で可能になりました。
合成タンニンを単独で用いる場合では、白革製造があります。クロム鞣しのところで、少し書きましたが、
鞣す最初にピックルという工程があって、PHを3くらいに(酸性に)しています。浸酸、酸浸けともいいますが、
これを行ってからドラム内で合成タンニンを使って短時間で鞣していきます。PHを調整して合成タンニン剤の
浸透を促進、ドラムの回転を利用して、ヌメ革を短期間で製造する方法です。クロム鞣し的な工程を、合成
タンニン使用で行うイメージでしょうか。
②アルデヒド(ホルムアルデヒド、グルタルアルデヒドがあります)鞣し・・・主にキッド、シープ
(子ヤギ、ヒツジ)を原料とする、白や淡色の手袋用革の製造に用いられますが、
いずれも前鞣しか再鞣しに用いられます。ホルマリン鞣しは耐水性に劣ります。
が、面白いのは、グルタルアルデヒドは、耐水性、耐汗性、耐洗濯性を革に付与する効果があります。
ただ一方、革を黄色く変色させたり、引き裂きやすくさせたりする欠点があり、薬剤のメーカーが
それらを改善したグルタルアルデヒドを出しています。
③その他の金属鞣しとして・・・ジルコニウム鞣し、白い靴の甲革を作ります。アルミニウム(ミョウバン)鞣し、
主として毛皮や白革の製造に用いられます。これらは、非クロム系の鞣し革として、ウェットホワイト、と呼ばれ
ています。ちなみにクロム鞣しの革はそれに対して、ウェットブルー、といいます。薄い青色の革です。
④油鞣し・・・この方法では、セーム革が代表的です。セーム革は自動車清掃用の革やガラス磨き等によく
使われています。シカ、ヒツジ、ヤギの革を用いて、上記②のアルデヒド系鞣剤にタラ(魚の)脂を浸透させて
鞣します。油の不飽和脂肪酸が皮タンパク質と結合、吸着することで鞣しが行われます。機械的強度が弱い
柔らかい革ですが、耐洗濯性があるのが面白い特徴ですね。清掃用品として実は革に接していたという
ことです。
あと全く異なる方法ですが、日本古来の油鞣しの方法として、菜種油を使った「姫路白鞣し」もあります。
こちらについては、私個人的にとても興味がありますので、また勉強して皆さんに紹介したいです・・・。
そんなこんなで、色々鞣し方法をご紹介してきました。
鞣し作業が終わったら、一応、皮は革になっているのですが、そのまま革製品の材料になることは少ないです。
この後、革によっては染色、加脂、の工程に入ります。その後水絞りを行い、伸ばし、表面仕上げと製革は、
まだまだ続きます・・・。
一応ここまで行い、伸ばし、乾燥まで行った中間材料としての未仕上げの革を「クラストレザー」といいます。
一応、区分けとして貿易上は「鞣した皮」とされていて、まだ革製品ではありません。当社では、この段階の
皮→革を用いて加工、鞄等の材料製作を行います。
なので、こういう素上げ革を購入されてクラフトされる方は、場合によってはよりご自分の目的に沿った
方法で革を染めたり、表面仕上げしたりが可能です。イメージとしては、プレーンな生地から自分好みに
して製作するという感じ。
正直ここ以降も、革の化学的性質の知識が必要かと思いますが、もっと大事なのはやはり感性になってきます。
みなさんの作品を見せて頂くと、「それぞれが違って、それぞれがいいセンス」といつも思います。
そんな、みなさんのセンス、が発揮されるようなヒントをご紹介したりお手伝いしたり、をさせて頂けましたら
といつも思っています。
まだまだ、製革の話は続きます。それでは。