2019年10月

  • ランドセル用の革を染革しました。

    みなさんこんにちは。

     

    このところは、天気のいい日が続いていますので、革を染めています。

     

    当社にランドセル生地、部材をご依頼して頂ける職人さんのお仕事は、

    秋以降、本格化していきます。

    来春ランドセルの生産に向けての材料提供、加工のお手伝いが忙しい時期になります。

     

    最近感じるのは、気候の変化。

     

    秋晴れの時期に染革は最適ですが、

    その時期が少し遅れているのでは、と思います。

     

    明日から11月。

    私が子供の頃、革を染めたり、洗ったり、伸ばしたたり、干したり、

    そういう時期は、もっとちょっと早かったような・・・。

     

    現在は小ロットで小回り良く加工生産しているので、

    そんなに困りませんが、

    もっと規模が大きいと、天候は納期に大きく影響します・・・。

     

    とにかく、しっかり革が乾くように太陽の力をお借りします!

    そして、2枚目写真のような白く美しい革を納めて頂いたタンナーさんに感謝します!

     

    この革は、雨にも強い丈夫なランドセルになります。

     

    そんなことを想像しつつ、革を干しました。

    それでは。

     

  • 革の匂い

    みなさんこんにちは。

     

    レザークラフトをされる方から、「少しエイジングした生地はないか」

    というお問い合わせが時々あります。

     

    正直、意図的に革を日焼けさせることはないのですが、

    カットレザーはご希望の大きさでエイジング(と言っても日陰の風通しのいい場所に放置するだけ)

    させたりすることは、少し前からしています。

     

    ただ、その方が、「革は匂いが・・・」

    ということをおっしゃっていましたので、

    消臭をできないか考えていました。

     

    実は、革は経年変化すると、鞣しや染革の際の匂いは減っていきます。

    革自体が緩くなる(繊維がほぐれる)からだと思います。

     

    その他、革製品をクリーニングされる方は酢をお使いになるなど、聞いたことがあります。

     

    私は、ちょっと試しに重層を適当な量、ビニール袋に入れて

    カットした革の近くに置いておきました。

     

    元々国産のプレーンなヌメ革なので、気になる匂いはしないと私は感じていました。

    ただ、日々革に接していると、その辺りは鈍感になります。

    なので、革をそんなにいつも触らない方からすると

    感じ方は違うのだと思います。

     

    当たり前かもしれませんが、数週間革と重層を日陰に置いておいただけ

    で匂いは減りました。

    切り出したヌメと匂いを嗅いで比べてみただけ、

    私の鼻の感覚だけ、なので、どこまで気になる匂いが消えているか分かりませんが、

    革の匂いが気になる方は、お試しになるといいかもしれません。

     

    革に何か加えるたり、拭いたり、塗ったりする訳じゃないので、

    革に負担がかからず良いと思います。

     

    少し時間はかかる方法かもしれませんが、

    日々使用する革製品は、ちゃんと使ってあげながら(風を適当に当ててあげながら)、

    保管は重層を少し近くに置いてみる。

     

    気持ちよく革を使うために、やってみるのもいいかもいれません。

     

    それでは。

  • 革は背中の裁断と腹の裁断で感触が違う。

    みなさんこんにちは。

     

    キレイな色ですね。

    アッシュという色の革です。

    ランドセル、女の子のカラーバリエーションで用意されている革です。

    こういうランドセル背負っているコ、見かけますよね。

    今日が晴れているから、という訳ではないですが、今日はこんな色の革と仕事をしています。

     

    裁断は、常に革の背中部分からスタートします。

    背割り半裁の場合はもちろんですが、

    腹割りの革も、作るパーツが小さいなら一旦背中で粗断ちします。

    ので、背中に直線ラインが入ります。

    だから、背側から裁断していけば、生地をできるだけ無駄なく使用できます。

     

    お腹側は、足がありますから、曲線がどうしても入ってきます。

    背側は、首が入りますが、お腹割りの場合、縁の方はカットされています。

     

    ヨーロッパレザーはコレです。

    革生地の良い部分のみ使用していると言えます。

     

    小さい(幼い、若い)牛の革を多く使っていますので、背中の、良い生地になる部分は切らず、

    腹で割って、足、首のような、皮が立体形状になっている部分は、

    使用しにくいのでカットされています。

     

    北米産の半裁の革は、年齢がいった大きい牛です。

    背中で左右に切らないと大きすぎます。

    生地はそこまで美しいとは言えないかもしれません。

    しかし、年齢の感じられる野性味が魅力です。

     

    それぞれ、皮の頃、をイメージすると分かりやすいです。

     

    生地を動かしつつクリッカーでプレス作業をしていくと、

    徐々に金型が、革、抜き台に深く入っていくようになるのが分かります。

    深く入るというか・・・、

     

    バスッ、バスッ、→ザスッ、ザスッ、→ズスッ、ズスッ、

     

    申し訳ありません。

    金型が革に入る時の音の聞こえ方を表現してみました。ちょっと分かりにくいですね・・・。

     

    革は背中が硬く、腹の方に向かって徐々に柔らかくなっていくので、

    こんな感じの音になります。

    だから、部位の移動につれて、クリッカーの設定を変える、型をヘッドのどの位置に

    当てていくか、を変えていきます。作業が早くなるよう臨機応変行います。

     

    革で何かお作りの方は、裁断する場合の刃物のキレ具合でご存じかもしれませんね。

    カットレザーだと分かりにくいのですが、

    革を切る時、曲げる時、硬さが体感として分かると、大きい生地を買う場合、

    「ここの部位はこういうパーツで使って・・・、」

    とお考えになると思います。

    革を手で触ると、硬さ、張り、コシ、が感触で直に理解できます。

     

    知識として、背中→硬い、お腹→柔らかい、ってのは大体ありますが、

    体感として自分が感じると、加工する際「こうした方がいい、ここはこうしよう。」

    という行動に直結します。

     

    そこに、もはや知識はないのかもしれません。

    単純に、素直に、そう感触が教えてくれるからです。

     

    仕事していると日々それを体感します。

     

    また、これは特にランドセル用の顔料コーティングの革に言えるのですが、

    色によっても生地の硬さは違ってきます。

    革の鞣し方は、表の生地の色に、相性がいい色になる鞣し方、になっているようです。

    基本はタンニンとクロムの配合ですが、微妙に変化をつけているのか、

    床面の色がそれぞれ違います。

     

    ベジタン鞣しは硬い。

    合成タンニン鞣し、混ビ鞣しは適度なハリ、コシ。

    クロム鞣しは柔らかい。

     

    また、顔料の配合や表面加工の方法で、生地の硬さは違います。

     

    発色がはっきりしている場合、染料、顔料が革に多く含まれる可能性があり、硬め。

    ただ、革の地の色が比較的白い場合、そんなに硬くない。

     

    表面加工に関しては、

    スムースな革は、程良いしなやかさ。

    シボの革は、柔らかい。

    型押しの革は、硬い。

    そんな感じです。使われている方は既に体感されているでしょう。

     

    そして、大切なのは革の厚み。

    本当に微妙なんですが、色で生地の厚みが若干違っていたりします。

    0.05ミリくらい厚くなっただけで、プレスした時革が切れなくなる場合があります。

     

    革の硬さ、密度は、本当に多様な要素で成り立っています。

    あと革の油分、乾き具合、天候、湿度なども考えると・・・。

     

    AIでそれらをデータ化、コントロールできる時代ではあります。

     

    が、深く考えることはないのですが、自分に素直になれば、

    革のそんな要素を感覚で体感できまます。

    大して経験も理解もない自分なのに・・・。

    人間の、生き物の、ナチュラルセンサーの優秀さを時に感じる時です。

     

    理屈に変換すると、分からなくなる時がある。

    でも、誰にでも分かる、出来ることには凄く価値があるでしょう・・・。

    経験という時間が手に入るから。

     

    まあ!あんまりこだわらず、適当なユラギを楽しむ。

    個人が、あえてブレのある革を遊ぶ。

    そっちの方が、その人にしかない時間になるのだから、いいのかもしれませんね。

     

    アッシュは、もっちりした感触の表面です。

    革自体は結構柔らかいので、厚めコーティングを行い張りをプラスしている印象です。

    生地が表面方向に引っ張られます。

    生地が真っ直ぐになるよう平らに保管します。

    が、あんまりやると表面が伸びてしまいます・・・。

     

    大切なのはバランスをとること。

    触ると分かるので、それに従います。

     

    革に関しては、百聞は一触に如かず、でしょうか・・・。

     

    それでは!

  • 晴れた日を狙って染革

    みなさんこんにちは。

     

    昨日はとても天気がよく革を染めました。

     

    ただ、今日は朝から雨。

    昨日、雨のかからない場所に革をちゃんと移動させておきました。セーフ。

     

    秋は乾燥した日が多く革染には良いのですが、

    ちょっと油断するといけません。

    だから天気も状況も常に変わっていくと考えます。

     

    写真は、金茶、という色です。

    幼稚園用のランドセルのカブセ部分に使う革を作ります。

     

    顔料の黄色と黒などをベースに混ぜて、染料メーカーさんに

    調色をして頂きます。

    色は自分で作るのですが、少しでも配分が変化すると、色ブレが起こります。

    なので、継続的に使用する製品で、それが目であまり分からない範囲でも許されない場合は、

    ちゃんと色を作って頂きます。

     

    顔料であれば、ここまでやれば革の地の色が少し変化しても

    まず色がブレることはありません。

     

    しかし、染料は、地の色が変化して、それを生かして行うので、

    むしろ色の立体的変化を重視します。

     

    そこは顔料とまったく違うところです。

     

    さて、調色はして頂くのですが、色を混ぜた場合、

    色はそれぞれ比重が違うので、塗料缶を開けた際「黒?」

    となります。

     

    長時間経つと、黒は比重が軽い為、上に行きます。

    茶など、他の色は下に溜まります。

     

    なので、一瞬あれ?と思うのですが、かき混ぜていくとちゃんと

    目指す色がすぐに出ます。

     

    他、色が革にしっかり付くようにバインダーを何種類か混ぜます。

     

    バインダーは縦方向、横方向、という組織の合わさり具合を調整するものや

    表面の硬さを調整する、柔らかさ、硬さ、を調整するものがあります。

     

    細かくはここに紹介しませんが、

    それらを調整して最適な生地の状態を目指します。

    特に硬さは重要です。

    硬くても柔らかくても、割れや伸びの原因になるので、革の具合を考慮しつつ微調整します。

     

    上手くいったら、しっかり乾かして、クリアコーティングして

     

    アイロンをかけていきます。

     

    そこまで行ったとき、「運が良かったなあ。」

    といつも思います。

     

    天気じゃないですが、革を染める場合準備していても、

    常に不確定要素は付きもの、という前提でいようと自分に言い聞かせています。

     

    加工の際、計画、準備はします。

    途中までその通りでも、何かは起こります。

    だから、対処が面白いし、次の準備に繋がる。

    で、ちょっとづつ、やり方が最適化していく。

    そして、そこに終わりはないようです・・・。

     

    今日から明日は雨のようですが、

    そういう時もあります。

     

     

    それでは。