2019年11月
- 新着情報
-
染革の試作をやっています。染料、小ロット染めを目指して。
みなさんこんにちは。
当社はランドセル用の染革、特に顔料染めを行ってきましたが、
染料の小ロット染めも行っていく計画です。
目的は、小回り良くみなさんの色のオーダーに応えていきたいからです。
もちろん、色の革を仕入れていく計画もありますが、
素材加工の段階から、一緒に革作品を作って、トータルに作る過程を一緒に行う方が
楽しいと個人的には思っているからです。
もちろん製品をつくられる方には、売れるモノの種になる素材探しや、
素材作りのお役に立てたら最高です。それで素敵な作品ができて、使う方がうれしくて、売れるならベストです。
私ができることは限られています・・・。
が、革の仕入れ、染め、ベタ漉き、裁断、は小ロットでもある程度ならまとめて行えます。
ので、その部分でお役に立てるようにしていきます。
その一環として、当社に一個あるタイコで、少量ロットの染革をする予定です。
写真は試作です。
タイコで行ってしっかりしたものができるまで、小さく試験しています。
天然染料も試しています。
一枚目は、シソ、茜、ウコン、使ってます。
ウコンは試しにシソ油で加脂してみたら、・・・
びっくりな色に変化してしまいました。一気に濃くなりました。油が金色がかっているから当たり前でした。
一応ゴールドっぽいキャメルを目指したのですが、まだ全然研究が必要です。
やはり素直に透明なツメ油が正解でしょうか。
カーキ、ブラウン、は梔子に極若干のメタノールイエロー染料。
染める際、鉄の量を変えて媒染液を作って染めると
濃淡のコントロールができました。
ツメ油で加脂、表面にオイルが少し出てくる状態を狙っています。
自然な油膜コーティングと、革の風合い、シワの具合、繊維の密度による、染料の濃淡ユラギ
が出せたら最高です。あと、色落ちを出来るだけ起こさせないように、酸による固着。
実験ですね。単純な色塗り、ではない。
まあ、正直同じものをタイコで色ブレなく作っていくのは大変でしょう。
基本、キャメル、ブラウン~黒で、まず練習。
その辺りが、皆さん使いやすいかと考えています。
習得したら、皆さんと一緒に生地の色を作れたら最高です!
そして、段階的に小ロット、半裁一枚からのオーダー染めを目指します。
そこまで行きましたら報告致しますね!
それでは。
-
フノリ、ガラス押しで床面処理します。
みなさんこんにちは。
天気がいいうちに、いつも床面処理をします。
革はキレイに漉いても、床面は繊維のザラつきや多少の毛羽立ちが残ります。
そこを滑らかにしておくのは重要です。
裁断して吟面はそのままで良いのですが、床面はなんらかの処理をしていないと
汚れるし、水分も入りやすいままです。
床面はどうしても黒ずみやすいです。
トコノールという糊を塗ってガラス板で磨くとツルンとします。
小さい生地ならそれでいいのですが、
半裁一枚から大量裁断となる場合、始めに床面をきれいにしてしまいます。
裁断してから全部のパーツに施すのは大変だからです。
その場合、フノリという海藻が原料の糊を使います。
刺身のツマ、の横に紫ががった細い海藻がよくありますが、
一応、アレを乾燥させた網状のもの、を染料業者さんから仕入れます。
それをお湯で溶かすと、透明なトロッとしたノリになります。
ノリですが接着性は低いです。あまりベトベトしすぎず、
乾くとサラッと生地がコーティングされます。
そのノリを、まずスポンジで革の床面全体にザーっと伸ばして塗っていきます。
2枚目写真みたいになるのですが、ちょっと分かりにくいでしょうか?
実はコレ、ちょっと労力を使います。
ノリを伸ばしつつ、ガラスに木の取手のついた器具(大体30センチ弱くらいの幅)で、革をこすっていきます。
この道具は、濡らした革を伸ばす場合にも使いますが、
ガラス板は床処理にも使います。
ガラスでしっかり擦ることで、より床面が滑らかになります。
最近、漉き加工にお預かりした革も、裏処理が見事でした。
私も負けないようにがんばります。
でも、半裁一枚は手が疲れます。
自分としては、しっかりヒトこすりに集中して、革が伸びない、
フノリが厚くなり過ぎない、均等滑らかに、をモットーに作業します。
あまりノリが多くてもパキッとして革がゴワつきます。
まあ、触って気持ちいいなら良しとします。
手を怪我しないことを考え、無理はしません。
小さい生地でもムキになってやり過ぎると、
革と手を傷めます。
落ち着いて丁寧にやります。
そうすると案外すんなり終わるものです。
気長にやります。
それでは。
-
床革の質感
こんにちはみなさん。
年末に向かってこの時期は、来年度出荷のランドセル用部材をどんどん
作ってお届けします。
それ用の革を染めています。忙しい時期になっています。
こちらは軽目の幼稚園ランドセル用です。
寒くなってきて、皆さん体調はいかがでしょうか。
季節の変わり目は、私は体調に変化が出る方なので気をつけています。
そんな時、干した床革を見ているとちょっと癒されます。
床革は色々な使われ方をするのですが、
当社では、シンプルに、まず染めて、クリアコーティング、アイロンがけ、裁断に進みます。
床革の質感は、きれいに革が漉けていれば、素朴で優しい質感です。
私は、体調が季節についていかない時は、ちょっと触ってみたりします。
吟革の滑らかで重厚な質感とは違った、軽さ。
いや、風通しの良さ、という感触。
風や色々なものを透過する繊維だから、
素直に染まるし、逆に汚れもする。
表皮が厚く、繊維が詰まっていれば、外のモノから守られる。
その場合、皮は硬く重くなる。
表皮がなく、目が大きすぎれば、通し過ぎる、場合によっては破れる。
皮は生き物の体調に大きく関係するものだと思いますが、
革になってからも強度、と通気性のバランスは同じく革のコンディションに影響します。
風を感じながら、体を強くする。
通気性を確保しながら、生地を強く保つ。
相反するようで両立すべきところ。
体も、革も、ちょうどいい落としどころでバランスを取ると楽になります。
作りやすい、出来上がっても丁度いい革になります。
この季節、身体には気を付けたいものですね。
それでは!
-
革漉き・ベタ漉きはどこまで漉いたらいいのか。
みなさんこんにちは。
日々ベタ漉き加工、裁断のご依頼頂きありがとうございます。
当社では、写真のような6ミリ厚くらいの革もベタ漉きしていますが、
漉き割り(割り漉き)、と言って5~6ミリを3~4ミリくらいにスライスすることが多いです。
原厚がある革は、その厚さを生かした加工を通常します。
ベルト、鞄の生地、楽器用ベルト、スポーツ用品、工業用部材などなど、
革の強度を生かしたものになります。
写真の革を、1ミリ程度まで薄くすることはあまりないのですが、
そういうご希望の場合は、大体2回漉きを行います。
一回で、6ミリから1.2ミリ等に加工することもできなくはないのですが、
精度を高めるため、1回目2.0ミリ弱くらい、2回目で1.2ミリに着地させる、という方法を取ります。
この場合、一回目の床革は3~4ミリくらいでしっかりしていて、2回目の床革は、
薄く破れていることが多いです。
もし床革ご希望の場合は1回目のしっかりしたものをお返しします。
2回目のものは大抵破れているので、こちらで処分しています。
革をどこまで薄くするのかは、お作りになるものによります。
ご購入された革で、厚い革はしっかりしたもの。
薄い革は繊細なもの。
すごくシンプルですが、そういう位置づけで良いと思います。
その上で、どこまで薄くするか検討されると良いかと思います。
厚い革を薄くするのは勿体ない、という考えもありますが、
キレイな吟面を薄く取り出して、
しっかりした床革を別の作品に利用、という方法もあるかと思います。
ただ、床革は吟面がなく繊維層をまとめる組織がなくなっているので、
生地としては弱くなっています。
写真の栃木レザーの床革は大変繊維が締まっていてしっかりしていますが、
もし使用する際は、なんらか表面処理、コーティングしないと
汚れ、破れ、シミが吟革に比べ簡単に発生します。
また、革のコシ、張りは吟面層がない為ありません。
しかし、その風合いが好き、という方もいます。
最近では、床革を使った素朴なトートバックなどもあります。
また、加工ご依頼頂く革の中には、床面がかなりきれいにコーティング処理されている革もあります。
一見するとどちらが吟面か分からないくらいの見事さです。
その床革は裏面がしっかり床処理されていますので、そこを表面として生かす作品を
お作りになるという方法もあります。
ただ・・・・、そういう革は実は結構硬いものがあります。
鞣し方もありますが、染料がしっかり入っていて、裏側繊維層からも
糊が深く浸透している場合、上の写真とはまた違う、パキッとした革の張りが確認できます。
床面はかなりキレイにガラス処理されていたりします。
その場合、バンドマシンの刃をしっかり研ぎながらベタ漉きをします。
上刃、下刃の研ぎ方のバランスがあり、そこは重要なのですが、
革をしっかりスライスする場合、革自体の硬さを少し和らげるのも対策となります。
どうしても刃に負荷がかかりそうな硬い革(型押し革、厚い革、染料を多く含む革、表面コーティングが厚い革など)
の場合なのですが、通常、革の裏面(床面)から、「アジを入れる」というのですが、
スプレーガンで水分を、少し吹き付けさせて頂く場合があります。
裏処理していない栃木レザーのヌメ革などなら、水分は素直に入ります。
が、裏処理がしっかりされている革の場合、水分がはじかれます。
その対策をしっかり行ってベタ漉きをさせて頂いています。
ただ、色々な要素を含む天然素材である革だから、半裁等、生地が大きくなればなるほど、
革を傷めるリスクも伴います。
正直、上手くいかない場合もあります。
そんな時お客様に事情は説明させて頂くのですが、当社がリクエストに応える力不足だったことを
只反省します。
そういう経験が次に生きるよう、色々な革を加工させて頂き、ありがたい限りです。
絶対に失敗しないと誓ってやると、結構何か起こったりしますが・・・。
革は、トライアンドエラーで、時に思い通りに行かないから、怖いし、楽しいのですね。
ちょっと長くなりました。お読み頂きありがとうございます。
それでは。