2020年6月
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仕上がった革の種類について
みなさんこんにちは。
ここまでで出来上がった革の一般的な性質について以下にまとめられます。
他の素材と比べ優れている性質。
①感触が優れている。柔らかさ、滑らかさなど。
②保湿性があり、触ると暖かく感じる。
③気温による変化が少ない。
④適度な可塑性、弾力をもつので、各種の形状に加工できる。靴、衣料、手袋として
露出しうる肌をしっかり保護できる性質がある。
⑤切り口は避けにくく、ほころびにくい。繊維として破れにくい素材である。
欠点としては以下があります。
①品質、形状が一定でなく、部位によって性質の違いがあり、裁断時の歩留りが悪く、
大きい面積の場合は均質な生地になりにくい。
②色落ちしやすい場合がある。染色堅牢度が低い。
③水濡れに弱い。
革特有の特徴として、親水性があり、空気中の水分がおおいとき、吸収し乾いていると放出します。
同時に革が膨潤、収縮するので、面積や体積が不安定になり形状変化しやすいです。この特徴は
皮本来の特徴に由来しますが、鞣し工程のところでも説明したとおり、革になっていくにつれ、
この欠点を補う特徴が付与されていきます。
それが優れた点になっていき、革の特徴になります。
仕上がった革は、以下のように分けられます。主なものだけまとめました。
1・銀付き革 原皮の本来の銀面模様をそのまま生かして仕上げてある革。代表的なものに
ボックスカーフがあります。仔牛皮を原料として、染色、タンパク質系バインダーで仕上げをして、
アニリン仕上げなど透明感のある仕上げがしてあります。靴、ハンドバック、鞄、家具など用途は
幅広いです。
2・ガラス張り革 クロム革製造工程で、ガラスに張り付けて乾燥して、銀面をバフィングして、
塗装仕上げした革です。原料は主に成牛皮。銀面が均一だが、風合いは銀付き革より劣ります。
3・スエード 革の床面をバフして、ベルベット状に起毛させて仕上げた革。仔牛の革から作られている
スエード革は高級品です。成牛皮から製造される場合、毛羽がやや長く、ベロアと呼ばれています。
4・バックスキン 鹿皮の銀面を除去して毛羽建てた皮。
5・ヌバック 革の銀面をバフして起毛させた革。スエードより、毛足がとても短くビロード状。スエード
革をさらに滑らかにしたような革です。
6エナメル革 パテントレザーともいわれています。革の銀面にワニス等を塗布、乾燥を繰り返し、光沢の
ある強い被膜を作って仕上げる。ハンドバック、靴の甲革などに使われます。
7・型押し革 革の銀面に種々の型を加熱、加圧して模様をつけた革。ハンドバック、ケースなどに
用いられます。
8・タンニン革 植物タンニン鞣しによって製造されたヌメ革。鞄、袋物、ベルト、革工芸など、タンニン
鞣しの特徴を生かして様々な用途に使用されます。
スエード、ベロア、バックスキン、ヌバックはどれも起毛革ですが、上記の違いがあります。
出来上がった革は、計量(大きさを測ります)、出荷され、なんらかの製品生地として活用されていきます。
もちろん、クラフトをされる方々にも販売されます。
ここまで、製革についてのご紹介読んで頂いた方、ありがとうございます。
結構すでにご存じの一般的な話も多かったかもしれませんが、仕立てる前の革の製造に、
ちょっとでもご興味を持って頂けたらと思いました。
今後は、もうちょっと、革でお作りの方に役立つ話題になればと思っています。
それでは!
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製革の仕上げ、補助作業。
みなさんこんにちは。
製革の仕上げ塗装は、その前後で革に補助的に加工を施す時があります。
今日は、そちらをご紹介します。
①バフィング・・・銀面をサンドペーパーでバフ処理をして仕上げます。銀面の悪い革に行い、キズなどを
削り取って修正します。その後、塗装作業を行います。また、ヌバック、ベロアのような毛足のある表面処理
を行う際にも使われる処理です。
②ポリッシング・・・フェルト、砥石で革表面を摩擦、磨き上げます。平滑さを加え、目止めを行います。ナッパ
革(という柔軟性のある平滑な革)、衣料革、手袋、グローブ革の製作の工程で行われます。
③空うち(ミリング)・・・空のドラムの中で革を打ちほぐし、繊維をほぐして、革に柔軟性を与えます。またシボ
つけのため行われます。一般に衣料革によく用いられます。似た加工ですが、バタ振り(という革をバタバタ
振りおろす機械)によって柔軟性を付与することもあります。
④型押し・・・革の表面に凹凸模様を、圧力、熱で型押しする作業。銀面のキズ等を型押しで目立たなく
することができる。クロコダイルなど爬虫類の柄等イミテーション加工をする場合がある。
塗装前でも、後でも行える。金属ロールや圧力プレスで革に熱、圧力をかけ、加工する。
⑤シボつけ・・・銀面にしわをつける作業、銀面を折りたたんだり、またはポーティングマシンという機械で
シワをつけていく。シボには主に以下があります。
1・水シボ 波模様のシボ加工
2・角シボ 水シボに対してさらに縦方向にシワをつけた加工
3・八方もみ 角しぼにさらに両対角、つまり八方向にもみあげてシワをつけてある加工
これらの加工はベルト、鞄などに施されています。
⑥グレージング(ガラス掛け)・・・革の銀面に平滑性、光沢を付与するために、ガラス板、めのう、金属
ローラーで銀面に圧力を加えつつ摩擦します。主にカゼイン、アルブミン仕上げの革に施される加工。
⑦アイロンプレス・・・塗装工程中、後に革表面に平滑性、艶を与えるためにアイロンプレスをします。
合成樹脂仕上げの場合、革表面に均一で薄い塗膜を伸ばすことができます。熱の入った金属板の下に
革を敷いて、金属ロールを通過させて金属板にこすり付けます。
これらの作業は、レザークラフトされる方でも、設備がなくても手作業で行っている方もいるかも
しれません。染色してから、ガラス板で磨いたり、染める前に銀磨りする方はいるかと思います。
革は、仕上げ方によっても最終的に全く違った表情を見せますので、染色、加脂だけでなく、この仕上げ
が重要です。また機能性、耐久性、官能性、にダイレクトに影響します。ユーザーの好き嫌いが分かれるのも、
この仕上げによるところは大きくあると思います。
やっと仕上げまで終わりましたね!
ここまで、ざっとですが、製革の流れを原皮を取るところからご紹介してきました。私の説明では、
工場見学みたいなリアルさは伝わりませんが、製革のしくみが、革で作られる方に少しでも伝われば
幸いです。
次回は、革を使うに当たって知っておくといい、出来上がった革素材の性質をご紹介致します。
それでは!
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革の仕上げ塗装方法
みなさんこんにちは。
今日は革の塗装作業について。
お客さんの要望はもちろんですが、タンナーさん、製革工場の設備によってもできることは違います。
以下の4つの方法を色々組み合わせることによって製革の仕上げが行われます。
①刷毛塗り・・・刷毛を用いた仕上げ塗装は植物タンニン革、豚革、銀磨り革、床革など、表面の凹凸が
大きい革、毛穴の深い革の塗装に用いられます。革表面の状態に応じて毛足の長さを選択して塗装を行い
ます。一人または二人で行い、当社では、私、または私と社長で行います。出来るだけ素早く仕上げ用顔料
や配合液を革全体に均一に塗布して刷毛ムラがないようにします。
スプレー塗装の下塗り時にも行います。
②スプレー吹付・・・最も一般的に行われている方法です。圧縮空気をスプレーガンに通し、空気が吐出する
時の圧力を利用して塗装液を革に塗布していきます。手吹き、ロータリー式(回転式)が一般的。ロータリー式
は複数個スプレーガンが設置されたロータリー吹付器下をベルトコンベアに載った革が移動します。溶剤や
塗料液の液量調整、コンベアの速度を機械的に管理できます。
手吹き式は手作業で染料、顔料、溶剤などをスプレーガンボトルにそれぞれ必要時にいれて塗布していきます。
当社はこちらです。
③カーテン塗装・・・均一な液量をカーテン状にして下に落下させていく機械を用いて、その下を革が、一定速度
で移動していくことで、塗装が行われます。常に一定量の塗料を革表面に塗装していく方法に適しています。
エナメル仕上げ塗装などに適しています。塗膜が薄く、柔軟な革の塗装にはあまり適していません。
④ロール塗装・・・ロールコーターマシンという機械を使用します。溝ロールに塗料を含ませて革表面と
接触、回転させ、塗料を革表面に塗布する方法です。ロールの硬度、溝の深さ、押し付け圧力などで、
塗膜の厚さを調節します。
当社は、こじんまりやっていますので、①、②の刷毛塗り、手吹きスプレーガンによる染色塗装を行っています。
現在は小ロットが主で、一日の吹付作業、大体半裁を10~15枚程度がマックスです。毎日やるわけでは
ないので、特に天気が良い日を選んで、週に1回くらいの頻度で行います。
刷毛塗り、吹付けに乾燥を挟みながら行いますので、開始から数日をかけて行っています。
小さいロットでは、このところは、個人で副業などで革製品を作る方がいらっしゃるので、
その方からご相談があった場合、少量50デシ~100デシ位量の革を染色します。
当社設備では丘染めになります。
作業方法書いてきましたが、革の仕上げ塗装の際、その前後に行う補助作業があります。
その色々な作業について次回紹介します。レザークラフトをされる方にもご参考になることも
あるかと思います。
それでは!
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雨の日の染料皮革製品と顔料皮革製品について
みなさんこんにちは。
雨が続いています。
製革仕上げ作業について、書いていこうかと思っていたのですが、
それは次回にして、今回は別の話を。
革製品をお使いの方、雨が気になるところですね。
特に染料仕上げの革製品をお使いの方、雨に濡れてしまったら
色落ちが起こる場合があります。雨で濡れてしまったら、優しい布で擦らず撫でるように水滴を拭き取りましょう。
染料仕上げの場合、水分は早い段階で革に馴染んでいきます。大きい水滴に当たるとシミになったように
見えますが焦らず優しく拭き取れば大丈夫です。残った水分は繊維にすぐ馴染んでいき、革表面は乾いて
シミは消えます。強く擦ると色が動く、落ちる場合がありますので、あくまで優しくです。
優しく、撫でる、でいきましょう。
ちなみに、ヌメ革にキズがついた場合、少しだけ濡らした布で優しく磨くとキズは革表面に馴染んでいきます。
無垢材の木をやさしく磨くのと同じです。ご自身の手をキレイにして汗や水分が出来るだけない状態で
時々優しくナデナデしてあげると、保革の効果があります。手の脂が革に上手く馴染んで革が光ります。
当たり前ですが汚れた手はダメですよ。またあまりやりすぎも皮脂の汚れが移っていくのでほどほどに。
雨の時期は、ある程度防水性が高そうな、顔料仕上げ系の革製品をお使いになられるのをお勧め
します。ランドセルはそういう製品の代表でしょう。
ただ、顔料仕上げといっても完全防水ではないので、濡れたらサッと水を拭き取って、風通しのいい場所に
静置保管するのがベストです。
元々美しく表面コートして革を保護してあるので、雨に濡れてもすぐに水滴がシミになったりはしません。
長時間の土砂降り雨でないなら、濡れても表面光沢はほぼ変化しません。
仕上げ塗膜が薄い染料革は、素直に空気中の水分を吸収排出します。通気性が比較的良いとも言えます。
ただ、コーティングがあまりに薄い時やタンパク質系仕上げ剤の革の場合、水や汚れに影響を受けやすいです。
逆に塗膜厚めの顔料仕上げの革は、通気性に乏しく、もし水分が多めに浸透した場合は、水分が塗膜内部
に残りやすいです。が、革表面に当たる水分の影響を受けにくい(浸透しにくい)のでそこまで、神経質に
なる必要はないかと思います。
ただ、組織内部に水分が長時間残ると革のタンパク質に細菌が繁殖してカビ発生の原因
になりますので風通しの良い場所で、早め乾燥を行うのがベターです。
顔料仕上げ革だから多少濡れても大丈夫、と放置するとカビの発生原因になるのでご注意を!
これはもちろん染料仕上げ革でも同じです!通気性が多少良くても、顔料仕上げ革より防汚性は劣ります。
ちなみに、カビが生えても革の繊維強度は変化しません。ただ、汚れや匂いをリカバリーするのは
至難の業です。革は洗浄、色素保持、乾燥、形状回復が困難な素材であるからです。
革は水分吸収してからその形状を保ったまま乾燥した場合、形が残ります。革線維だけではありませんが、
特に天然繊維は水分を吸収して乾燥していくとき、水分がいなくなった空間を繊維が束になって寄り合い
埋めていきます。
全体組織としては収縮、硬化します。特に革は繊維構造が不規則複雑なのでその性質が顕著です。
一旦形が安定すると、革を使いつつ繊維がまたほぐれていくまで形状はそのままになります。
製品は積み上げたりせず、いつも使う形を保ったまま保管しましょう!
他の繊維系どの製品も同じですが、雑に保管すると型崩れします。
そして革は形が元に戻りにくいです。一旦ついた形のクセを戻すのは簡単ではありません。
革は一見頑丈そうに見えます。でも水分にはデリケートです。
性質としては、伸び破れ付き通しに対する対抗性、=機械的負荷に負けない、
また、耐熱、耐摩耗、対電気性があり、強いイメージです。
繊維構造が複雑で、吸湿、乾燥に優れていて、伸縮性も多少あり、耐久性が高いです。
が・・・、実はコラーゲン繊維の集合体です。
特に水に対しては、他の自然素材の繊維と同じくデリケートな素材です。
皮から革になった時点で、ある程度の疎水性は付与されますが、完全ではありません。
水分に影響を受けやすいタンパク質を多く含むので、湿気はもちろん、極端な乾燥によっても、
組織変容が発生するのは仕方ありません。
そのため水分出入りの影響を最小限に抑えるため、適度な表面保護と油分補給が必要になってくるのです。
水分、水って、なんか無垢で柔らかいイメージがあるけど、
形がどのようにでも変化するし、なんとでも結びつくし、分子レベルで奥の奥まで入っていくし、
空気にもなってしまうし・・・、
実は、なんか、最強です。
というより、そのものに性質はあまりなくて、触媒になって周りに影響を及ぼしているだけ。
革に、自分に、良いものであるように雨と付き合おうと思います。
それでは。