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製革の加脂工程
みなさんこんにちは。
しなやかな革、好きですか?
適度なオイルを含み革の奥から光沢を放つ艶、そんな革で
作りたいという方、多いです。
革は色々あるし、そういう革ばかりがすべてではありませんが、
革の最も革らしい姿はそこにあるのかもしれません。
製造される大抵の革は色々な方法で、そんな姿を再現、体現する方向にあるのだと
私は考えています。
製革の工程では、加脂、という工程になります。
今日は、ちょっとその話をしてみます。
鞣し、染色までの革で、革は水に濡れた状態だと、繊維間に水が存在しているので、柔軟性が
あります。が、乾燥すると繊維同志がくっついたり、繊維細胞が硬くなります。ですから、乾燥する前に
それをあらかじめ防ぐような物質、つまり油剤、を入れておくと乾燥していっても革が硬くなりません。
水分を油分に入れ替えるというイメージです。
または、乾燥した革に油分を加えてあげます。
乾燥後は繊維簡や革表面に油剤の膜が存在するので、繊維間の滑りが良くなり柔軟性が得られます。
加えて、水、その他の物質(汚れ)に対して、多少の撥水性、防水性がアップします。
また感触、艶、革の膨らみも得られます。
なので、最終的に、革の革らしい機能性や美観を加える重要工程となります。
方法は、革ヌメクラスト革のように乾燥している場合は、直接塗布する(引油)、濡れている場合は
ドラム内で施す。という方法ですが、ドラム内で施す再は、液体油剤だけでなく、固形油脂を乳化させて
油脂類の浴中で革に吸収させるという方法があります。
ここでも、鞣剤、染料と同じで、電離性で加脂剤はジャンル分けされます。
アニオン性・・・硫酸化油、スルホン油、リン酸油、等それぞれ化合物で色々あります。
カチオン性・・・アンモニウム、アミノ化合物、種類多。
その他は両方含む両性、非イオンのノニオン性、なんかがありますが、普通上記2種と併用されます。
中性(生油)・・・植物油として、ひまし油、椰子油、パーム油、菜種油、落花生油、ホホバ油、等
動物油として、陸の動物の牛脂、豚脂、ミンク脂等、海の動物、タラ、ニシン、イワシ、
ワニ、オレンジラフィー(深海魚の仲間)、あとは鉱物油などあります。
菜種油は姫路白なめし、イワシ油は国産ヌメ革に柔軟性を持たせるのに伝統的に使用されてきました。
ヌメ革を色々オイルアップして試している方は多いと思います。製革用の油以外は、そもそも食品とか
お化粧用なんで、目的が違っていたりするので、お試しになる際は、端切れなんかで試してから
オイルアップするといいか思います。クラフト用レザーオイルなら大丈夫ですが、生成りヌメ革は
色々な油でオイルアップするのには適しています。
オイルはそれぞれ乾く時間や、浸透する速さが違うので、オイルを入れてから半日~1日経過させて
銀面の様子やしなやかさの変化を見て、好みのオイルを使うと面白いですよ。
個人的に面白いなあ、と思っているのは、ホホバ油、アルガン油、オレンジラフィー油とか
化粧品で聞く名前が入った油ですが、基本製革には使いません。それらを含む製革用のモノを使います。
大体が動物性油と植物性油がブレンドされたものです。
線維摩擦を下げて相性良く油分を浸透させるには動物性、表面のコーティングには植物性が
よく作用します。植物性の速乾性と浸透力を、相性のいい動物性で中和しつつあまり革に急激な変化を
あたえないようにしているオイル、が製革用オイルかと思います。
中性油は、革の風合いや物理的な性質に及ぼす影響が結構強いです。
また匂いも残ります。とくに湿気の多い季節は、脂の匂いがする場合があります。
物理的影響といいましたが・・・、加量が10パーセント(革の重さに対して)くらいを越えると繊維の
強度が落ちていきますので、オイルの入れ過ぎは注意が必要です。
通常加脂は染色工程のタイミングで行っていきます。
これ以降、革の仕上げ、工程に入っていきますが、それはまた次回以降ということで。
それでは。
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染革の工程
みなさんこんにちは。
蒸し暑い季節になってきました。夏らしい明るい色で革を染めていきたいですね!
キャメル色は、最近のランドセル定番カラーです。
他ブラウン、ワインは定番のブラック、レッド、ネイビーに加えて飽きのこない長く
愛用できる色として人気が高いですね。
革の染色ですが、通常はドラム染色、またはハスペル(パドル)染色で行います。
回転するの円形の大きな浴槽に革、染料、薬剤を投入して行いますが、まず、素材革のサンプルで
色合わせを行います。過去の使用染料、薬剤、水、と革の重量、面積の比率でレシピを再現して
通常は複数染料で調色して、小さく染色してみます。
問題ないなら、大きく染めていきますが、目標色とのズレがある場合、染色作業にて補正します。
同時に温度、PHを調整しながら行います。
均染剤、吸着促進剤、などで革を処理してから染革を行う場合もあります。
種々の革、染料で個別のレシピがあるのですが、大規模な製革工場でしたらカラーマッチングシステムで
処方がコンピューターで自動化されています。
染色{水溶液)温度なんですが、一般に温度が高いと染料の吸着は速くなります、が、
不均一で表面的な染色になりやすいです。逆に温度が低いと染料はゆっくり深めに浸透します、が、
染色の堅牢度は低めになります。
染色後は有機酸等で染料の定着を行います。その後重要なのは、革をいったん水浴して表面に
残っている染料を落とします。発色が良くなり、摩擦に対しても強い革になります。
革を染めていくときどうしても無視できないのは、革は乾燥すると著しく色合いが変化していくことです。
革を染めたことがある方なら、実感されているとは思います。
染めていい感じと思っても、乾燥したら色が思ったより浅かったとか、逆に濃いかと
思ったら、結構目標の色合いに近くなったとか。繊維の素材はそういう傾向はありますが、
革は特に乾燥時と湿潤時の色変化が大きいです。
乾燥時間が長いので、特に厚手の革の場合、色むら、色違いからの染め直しもします。
革は繊維構造が複雑で不規則で多孔質なので、湿潤状態の場合、表面で光の
乱反射が起こりやすいのが原因ですが、実は乾燥の方法による変化もあります。
水分量の多い革を熱風で強制的に乾燥していくと繊維が締まりながらくっつきます。
なので、色濃くなります。
逆に繊維をほぐしながら段階的に乾燥すれば、色は淡くなっていきます。
乾燥はこの後の工程で加脂を行った後にします。
そんなこんなで、目標の色合いに達するために、データを横目に試行錯誤していきます。
一応同質のヌメ革でも、ロットが違っている場合、鞣剤の残留濃度が多少違っていたりします。
個体差のある自然のものなのでそういうブレはあります。そこで実績として記録してあるレシピを調整していくのが
染革の仕事なのかもしれません。
染革の工程の簡単な説明は上記なのですが、この後の加脂、仕上げ表面処理で、
また革は違った色合いや表情を見せていきます。
喜ぶのはまだ早い、といつも思います。
流れとしては、素材革を、水洗→中和→染色~色の定着→水洗→加脂→水洗→乾燥
なのですが、染色は浸透、上掛けと段階を踏む場合があったり、加脂を染色と一緒に行う場合もあります。
革素材によって工程はそれぞれ違います。
革をこのまま乾燥させると少し硬くなってしまいます。
次回から、革をしなやかにするための加脂の工程についてご紹介します。
それでは!
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酸性染料について。
みなさんこんにちは。
キャメル小さく染めた時の写真です。
今日も染料の話です。
皮革において一番重要なのは酸性染料です。使用されている大半の染料がこれに当たる
からです。弱酸性溶液中で染色できることからこの名称で呼ばれていますが、
以下に大きく分かれます。
①均染・浸透型・・・染料の吸じんを強くするため強めの酸性PH3~4位で色を吸じんさせて染色します。
ベースとしてこちらを浸透、染着させて、
②表面染着型・・・こちらを使って色の表面濃度を高くします。PH5~6で染料を吸じんさせます。
こちらは、湿潤状態では少し色落ちがおこります。
両方を使って染色し、加脂をしたら、一度水洗い(ソービング=表面に残った色を落とします)
その後、テンション乾燥します。
他に③金属塩錯体染料、があります。含金染料ともいいます。耐光性、湿潤堅牢性はかなり高い染料です。
色はそれぞれありますが、暗めの色調の染料で、金属塩がタンパク質と錯体を形成するのを利用しています。
もう一つ、直接染料というのもあります。
そのままで染着が強いものがありますが、多くは酸を添加することで安定化します。上記の酸性染料より
色がハッキリしているものが多いのが特徴ですが、表面に色が入る、表面染着型の染料といえます。
大体、①~②で染めていくのですが、②の工程では、塩基性染料を使うことがあります。
クロム革には中性、タンニン革では酸性溶液を用意して染着させます。上掛け染料として
使用して、こちらも特徴である発色の良さを出していきます。耐光性は弱いのですが、
染めた時の発色はいいです。
経年変化ですぐに色があせてくる場合はこの染料の可能性もあります。
ただ、製品だけを見てどういう工程でその生地が出来たかを知るのは困難です・・・。
他色々な性質の染料がありますが・・・、ほとんど上記の染料の製品(革)と考えていいかと思います。
特徴的なものでは、ホルマリン鞣し後の鹿革で使う、建染染料があります。
いわゆる藍染め、インジゴ染料として使われています。空気に触れないように丁寧に揺らして染めて
その後空気にさらして酸化発色させるってのを繰り返します。
個人的に興味あるのが、天然染料なのですが、植物から抽出した染料で、皮革用ではヘマチンといって
ログウッドから得られる染料が有名です。鉄、チタンで媒染してちょっと青味の入った黒色になります。
他にも天然染料はたくさんあります。
ただ、革に色を定着させていくにはそれなりの量が必要になってきます。
リクエストがありましたら小さく染めていくのを始めています、が、
まだまだ修行中ではあります。
みなさんのイメージを具現化できるようもっと練習しますね。
それでは!
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皮革染料と革。
みなさんこんにちは。
革の染色について今日から書いていきます。
まず大きくお伝えしたいのですが、染色とは染料を用いて色を繊維に染みこませていくことです。
対して顔料による着色は革の表面に色を乗せることです。
これは、工程としては仕上げ作業に属するものとして捉えることができます。
顔料でもある程度革に色素は染みこんでいますが、染料と比較すると色が革表面に乗っているイメージです。
染料では革の地の色が出やすいです。対して顔料はあまり地の色の影響を受けません。
で、ここからしばらくは、「染料」による「染色」の話をしていきます。
ここしばらく革繊維と鞣剤、の反応の話をしていたのですが、染色になって、今度は染料と革繊維の
相互作用の話になってきます。革繊維と染料の間になんらかの結合が生じると「色が染まる」ということに
なります・・・。
なので、染色先になる革の特徴を理解しつつ、それに応じた染料を選択しなければ、革への浸透性、
均染性、適度な濃度、色の堅牢性を持ち得ることはできません。
染料は、種類は色でもちろん示されているのですが、同時に、化学構造、染色基質(染めるものの種類)
染色方法、使用の目的なんかが明記されています。皮革用、というか、薬剤、染料業者さんに革素材に
合う染料を提案してもらいます。染料の化学構造が基質の革と相性のよいものでなくては、染まりません。
皮革染料の大半は、アニオン染料と言われるものです。アニオン?説明しますと、負に荷電したイオンの
ことです。つまり陰イオンです。これに対して陽イオンはカチオンといいます。
染色基質の革に関して。一般にクロム革は陽イオン基質です。タンニン革は陰イオン基質が強めです。
陽イオンは電子を出す性質、陰イオンは電子を入れる性質を持ちます。
つまりお互い結合しやすい性質を持ちます。
ですから、クロム革はアニオン性、タンニン革はカチオン性染料との相性がいいのですが、
タンニン革でも、クロム塩やアルミニウム塩で媒染処理(前処理としておきます)をしておくことで、
染色が可能です。アニオン性酸性染料で染色する場合、この処理をします。
このように、染色の為、革基質に処理を行うこともあります。アニオン染色は革の染色で、
最も多く用いられる染色法で、酸性染料などの合成染料を用いて、色が濃く堅牢な染色が出来ます。
カチオン染色は色調は鮮やかですが、日光堅牢度に弱い場合があります。こちらも合成染料が主流です。
ちなみに合成染料って化学構造としてアゾ系って呼ばれていて、合成染料の大半がこの形状を持ちます。
酸性染料はクロム革の染色に最も広く使用されています。
皮革染料は、酸性染料、直接染料を含むアニオン染料が9割以上で、ほとんどが合成染料。
染料を定着させのるに、どんな素材もそれなりの化学処理はなされているでしょう。
革も同じ。
今日はここまで。
結構、細かくやっていますが、次回から酸性染料~ほかの染料についてもしくみを紹介していきますね!