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革の区分(名称)について。
みなさんこんにちは。
今日は、革の呼び方(特に牛の革)について。
この区分を意識されている方は、生地を仕入れて製品製作されている方か多いかもしれません。
ただ、素材を購入する際、なぜその革がそういう価格なのかを判断する一つの材料になります。
概ね革の価格は、表面(銀面)の状態、で決定されます。
ただ、どの状態が価値があるかは、購入する方の好みにもよります。
染色、仕上げ方法によって革の価値は変化しますし、
良い革、って人それぞれの好みや時代の流行で変化しますから・・・。
が、希少性、キズが少ない、という基準で、やはり銀面の美しい皮、というものは確かに存在します。
そういった皮は、最終的にその美しい銀面(表面)を生かした仕上げの革に加工されます。
だから概ね価格は高めになります。
本当にザックリの説明ですが、長く生きている大人の皮は比較的安く、若い(子どもの)皮は高い、という
傾向にあります。
革の紹介で名称が明記されている場合、そういうことも価格判断の基準になります。
が、仕上げに手間がかかっている革や、産地やブランドによって価格が高い場合はもちろんあります。
なので一概には言えませんが・・・、
長く生きている生き物は経験豊富で、キズや皮膚の病気にかかっていることがある。
逆に小さいうちに亡くなってしまった生き物の皮はそういうことが少ない。
よって、希少性が高い(例えばお母さんのおなかの中で亡くなっている場合など)から価格が高いということがあります。
以下、名称は主に米国で重量区分されている呼び名です。
厚くて重い皮・・・ハイド
仔牛や羊などを含む、薄くて小さい皮・・・スキン
以下、牛に関して
ステア・・・去勢された牝牛の皮 ネイティブステア(焼印なしの皮)
コロラドステア(お腹に焼印のある皮)
バットブランデドステア(臀部に焼印のある皮)
テキサスステア(焼印あり、小さく薄い皮)
ブル・・・牡牛の皮 ネイティブブル(焼印なし)
ブランデドブル(焼印あり)
カウ・・・牝牛の皮 ネイティブカウ(焼印なし)
ブランデドカウ(焼印あり)
キップ・・・仔牛と成牛の中間の牛の皮、中牛皮、といいます。
カーフ・・・仔牛皮
当社では、主にステア牛から出来た革を多く扱っていますが、ブルやカウのような革も扱っています。
生地はそんなに美しくないのですが、厚く硬く大きい革で、工業用やベルトに多く使用します。
多分レザークラフト用にあまり用いられませんので、あまり目にしない革かもしれません。
つづいて羊。
ラム・・・子羊
シープ・・・大人の羊
国内では「ヤンピ」とも呼ばれることもあります。
次に山羊。
キッド・・・子羊
ゴート・・・大人の山羊
一枚革の大きさ(デシ数)で、大人の生き物の皮か、子供の生き物の皮か判断できます。
牛の成牛の場合、半身(半裁)で、220~250デシ。
仔牛の場合、120~150デシ程度でしょうか。
羊、鹿もこの位が多いですが、山羊は種類がたくさんあるので種によって大きさは色々です。
当たり前ですが、大きいほど大人の生き物の皮の可能性が高いということです。
また、カットの方法(背割り、足頭など(縁革「エンカワ」と言います)をカットして背中~お尻のみにする、など)
によって明記されている革の大きさは変わります。
ただ、小さくカットしてある革は、どういう牛の革なのかそこのところは分かりにくいです。
ネットショップの革屋さんなら、そういうところを含めて明記されていらっしゃるならかなり信頼できると思います。
が、大体カットレザーの場合、美しい生地をセレクトして製品化しています。
なので少し高いと感じる場合があるかもしれませんが、カットレザーの生地は生き物の形が残っている革
よりは美しいと考えられます。
欧州産の革は仔牛の皮が多く、背割りはあまりしていません。
背中~お尻の生地のいい部分をそのまま生かして裁断している場合が多いです。
そういった、「キップ」「カーフ」明記の革は、若い牛で概ねデシ単価も高くなっています。
本当に希少価値の高い革は、高級ブランドのバック等に利用されます。
加えて革の仕上げ方法でもコストは変わります。
他にない独特の個性的な仕上げが施されている革なら、上記は別にして価格が高いかもしれません。
「なんでこういう価格なの?」
と皆さん考えるかと思いますが・・・、
結局、若くて、生地がキレイで、仕上げに手間がかかっていそう、な革が高価と言えます。
・・・まあ当たり前の結論になりますが、そういうことです。
ただ、私が思うに、革は使う方の好みで価値が変わるので高い安いのその辺りはなんとも言えません。
私としては、皆さんが革で楽しく何かを作って、特別な体験が出来たらそれで良いだけです!
ウチの革は、北米産の原皮から作っている革です。
もしかしたら、自分が食べた牛の皮かもしれません。
有り難いことです。
それでは!
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牛や豚、肉以外は何に使用されるのか。
皆様お久しぶりです。
更新と勉強をサボっていた私の怠慢お許し下さい。そんな弱い私のブログを
覗いて下さったアナタ様、なんと有り難い・・・。
ところで、皆様、コロナウイルス影響下にある昨今、いかがお過ごしでしょうか?
コロナウイルスの影響は革の業界でも今後色々なところで表面化していきそうです。
直近では、今後特に欧州産の革の入荷が減ること。
また輸入で多くを賄っている原皮(革の材料)の入荷が減ること。
なので、革の価格が上昇していくことは予想されます。
ただ、豚の革に関しては、国内でほぼすべての供給が賄われていますので、
そこはあまり影響ないかと思います。
革に関しては上記なのですが、実は牛や豚の利用形態は多岐に渡っています。
今日はそんなことをお伝えできたらと思います。
革に直接関係ないのですが、革が食肉副産物のごく一部にしか過ぎないことを知っていますか?
そんなことを知って革を使うと、すべてが影響し合っている中で、自分が担っているものがいかに小さいのかが見えてきます。
ここでは、牛、豚に関して調べたことを書いてみました。
精肉・・・牛肉、豚肉 利用方法・・・食用
内臓・・・牛、豚の内臓 ・・・食用、ソーセージケーシング、非食用(ラケット用ガットなど)
脂肪・・・牛脂、豚脂 ・・・食用、石鹸、潤滑油
血液・・・牛血、豚血 ・・・ブラッドソーセージ
血清アルブミン ・・・化粧品副資材、皮革仕上げ剤
血粉 ・・・飼料、肥料
皮・・・牛皮、豚皮 ・・・革、にかわ、ゼラチン、コラーゲン製品
骨・・・牛骨、豚骨、骨ゼラチン、骨油 ・・・食用、カプセル用、石鹸、ローソク、軟膏基材
骨粉、骨炭 ・・・飼料、肥料、脱色用活性炭
毛・・・牛毛 ・・・フェルト、ブラシ
豚毛 ・・・ブラシ
角、蹄・・・蹄油 ・・・飼料、肥料、潤滑油
精肉に4~5割が利用されています。内臓は2~3割が食用。私たちが食用として頂いていない部位は
3~4割もあります。革はなんとなく分かりますが、牛、豚はそれ以外の部位も工業用や飼料用として大量に
使用されています。
当社の近くに解体後の牛や豚を、さらに用途別に分ける工場があり、私は小さいころからそれを知っていました。
そういう事実がある。
それがいいとか悪いとか、そもそも肉食に問題がある、とか、
色々な意見があると思います。
宗教的に禁じられている面もありますし。
人の身体や心、環境への影響を考えてのことだと思います。
自分が思うのは、上記が今現在の事実だということを知っているのが大切だということです。
様々な経済のつながりや、歴史的な大きな流れは、生き物の本能や欲望に根差した結果です。
だったらせめて自分にできる小さいことをやるのみです。
しっかり仕事をして、ちょっとでもいい革にできるように精進するだけですが、
まだまだだからたくさんお叱りを頂きます。
そんな時、自分のやっている小さいことにもちゃんと意味があるし、
しっかりできない時は、実は自分に不都合があるのだ、と反省します。
やれることはしっかりやり、今できないなら1ミリづつでも日々やれる範囲を広げるだけ。
コロナウイルス。
目に見えない小さなウイルスなのに、世の中に計り知れない影響があります。
自分のやることやらないこと、出来ること出来ないこと、
身の回りの事、小さくても軽く扱ってはならないと感じる今日この頃です。
それでは。
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皮の種類について
みなさんこんにちは。
今日は革になる皮の種類について書きます。
皮を私たちが皮革として使わせて頂いている生物は基本的に脊椎動物達です。
他の種類の生物は基本的に、皮がない、というか、
外皮が、甲羅とか・・・。
皮とは別の話ですが、甲羅ってすごく硬くて、叩いたりキズつけたりしても大丈夫そうに見えますが、
実はかなり痛みを感じるそうです・・・。
ってニルヴァーナのカートコバーンさんが言っていました。
痛みを感じやすいセンシティブなロックミュージシャンの方です。
すいません話が逸れました。
皮を持つ動物さんたちは、私たち人間ともちろん同じで、触感、痛感が発達している生物ばかりなのです。
私の中で、
皮、革は、痛いものです。
で、以下が、主に私たちが製革に利用させて頂いている動物さん達です。
・鳥類・・・ダチョウ(オーストラリアのオーストリッチ、アメリカ、アフリカダチョウ)
・両性類、爬虫類・・・カエル、ニシキヘビ、ウミヘビ、ミズヘビ、ニューギニア、ミシシッピワニ(一応クロコダイル
とアリゲーターで違いがあります)ウミガメ、オオトカゲなど
・魚類・・・サメ、エイ、サケなど
そして、製革に最も多く活用されているものは、以下の哺乳類さん達です。
・偶蹄目・・・イノシシ、ブタ、シカ、ウシ、スイギュウ、ヤギ、ヒツジ
・奇蹄目・・・ウマ
・有袋類・・・カンガルー、ワラビ―
・齧歯目(げっしもく)・・・カピバラ
偶蹄目、奇蹄目は家畜として私たちがお肉、乳、毛、農作業のお手伝い、
などとして使わせて頂いていることが多い動物さんです。
それら以外は、すべて野生動物です。
それらの動物さんたちの皮が皮革として利用されるのは、皮に希少価値があり、
特有の模様や毛がある為というケースがあります。
しかし、基本的には「絶滅のおそれがある野生生物の国際取引に関する条約(ワシントン条約)」
によって、その利用には制限があります。
これらの動物さん達の革は基本的にそのルールに従って作られています。
そのため、毛皮(うさぎなどの小動物)、ダチョウ、ワニ、等は製革目的で、飼育されている場合があったりします。
これには賛否両論があります。
最近では、毛皮、爬虫類皮は、特に高級ブランドメーカーが中心となって
使用しないという宣言がされています。
こういう革は、最近では見かけるのがだんだん少なくなってきている印象です。
私の個人的考えとしては、このことは良いことだと思っています。
革を得る為だけに命を頂くのは、あまり合理的ではない、と思います。
しかし、この種の革をお使いになって生業にされている人がいるのは事実です。
そして、そういう製品を好む方がいる。ニースがある、のも事実だと思います。
だから全否定はしません。
毛皮は人工のものもあります。
また、クロコダイルの革も、実は牛の革に柄が型押しされて作られているものもあります。
フェイクレザー、という言い方もありますが、そういうニーズを満たすために牛さんの皮を
有効活用するなら私はいいことだと思います。
その上で、食肉等で命をいただいた動物さん達の皮はしっかり使うべきだと私は思っています。
皮は食肉の副産物である、という言い方をされますが、皮から成る革は、
資源活用の為のせめてもの発明です。
頂いた命をなんらかの力、形に変化させて有効活用するなら、次の命に繋がります。
そして最終的に熱資源に変われば、と個人的には思っています。
話が逸れました。
皆さんに特にお伝えしたいのは、国内で流通する革の8割以上(特に牛、羊、山羊等)が
実は輸入原皮によって作られているということです。
日本国内では、ウシ、ヒツジ、ヤギ等は家畜の頭数が少ないのでその皮のほとんどは、
輸入されています。特に北米産の牛皮が多いです。当社取引タンナーさんも北米からの
牛皮を主にお使いです。
スーパーのお肉売り場でも、輸入肉がすごく多いと思います。
ただ、豚皮だけは、国内自給ができ、また一部輸出されている皮です。
皮~革は人間の食文化によるところが大きいです。
皮、革がどこから来ているか少しでも知っていると、それらを使わせて頂く時
とても有り難い気持ちになるし、
単純に、モノ、としての扱いになりません。
自分の身体と同じ、と感じつつ。
今日はこの辺で。
それでは。
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なめし、とは何か。
みなさんこんにちは。
皮をなめす。鞣す。革、柔らかい、と書きますね。
革、は皮ではありません。革新の「革」です。
生き物の皮に何らかの処理を行い、食肉等の副産物を有効利用しようとした、ものです。
鞣す。
革をお使いの方なら聞いた言葉かと思います。
革の成り立ちには諸説あります。
tan タンニン鞣し。
最初、人が皮をガシガシ噛んで柔らかくしていたという話があります。
tanという言葉の由来はそこにあります。
酵素の力で皮が軟化して革となったという説もあります。
その辺りの話は歴史的にかなり長い話になります。
ので、また書いていこうかと思いますが、
有史以前から狩猟の獲物または家畜からの副産物として皮が人類の生活に生かされていたことは
壁画、日本でしたら古墳からも明らかな歴史があります。
鞣す。
という言葉以前に、動物から剥がした原皮は水分を多く含み、腐敗し易く、
また乾燥すると硬くなるため、水洗いして、血液、汚物、脂肪を除いた後、柔らかくするために
油等の軟化剤をすりこんだり、物理的に揉んだり伸ばしたりして使用されていたということは
古代の遺跡調査から考察されています。
また、脱毛や染色目的でヘブライ人が油鞣しから植物タンニン鞣しを発見したと言われています。
油に付け込んだり植物の染液に皮を浸染させてみた、ということです。
今日の植物タンニン鞣しは、こちらを起源としているようです。
では、今日的に言うと鞣すとは?
簡単に言うと以下です。
動物の皮に様々な処理を行い、植物タンニン、クロム塩等の鞣し剤を浸透、細胞組織結合させて
皮の有用性を増す操作、を指します。
革になる前の皮は水分含有量が多く、また不要な各種物質
(色々に使用されるものがあります。結構捨てるものはないのです。また紹介します。)
を含みますので、このままでは腐敗し易い。これを乾燥しただけでは固くもろくなります。
が、鞣しを行った革は腐敗しにくく湿気をあたえても膨張せず、また乾燥しても大きく変化しません。
ここまでが、いわゆる鞣しと言われる工程になります。すごくザックリの説明ですが。
工程は準備~鞣し、仕上げに至るまでたくさんの段階を経ます。
組織構造を安定状態にしつつ、実用的な柔軟性、風合いを与えたものが「革」です。
まとめると、
革、は主にコラーゲンを残して不要な各種のタンパク質、脂肪を除去して鞣し剤を
皮の組織に浸透、結合させて、その後、各種の化学的処理、物理的処理を施して
染色、加脂、、表面仕上げ、を行ったもの、です。
どうでしょう?
皮が革になるまで、長い歴史と経験、現代ではタンナーさんの日々の研究、開発から
私たちのところにやってきているんです。
実に有り難いことです。
もし動物皮から革を作らないなら、それらは廃棄しなければならない。
もちろん動物を食べない、という選択肢もあるかと思います。
が、現状、たくさんの肉や乳製品を人が生活上利用するのであれば、せめて皮はやはり利用して
しかるべきもののはずです。
私はそう思います。
だから私は「革」を使わせて頂いております。
大切に使うことで、命に感謝するのが目的なのです。