2020年5月
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クロム鞣しについて。
みなさんこんにちは。
写真は黒クロム革です。
当社ではBOXレザーを取り扱っています。楽器ケース等に主に使いますが、他にも、靴、薄物の革製品
にも使う場合があります。
まず、鞣しですが、ごく簡単に言うと、準備作業でほぼ純化されたコラーゲン繊維間に鞣剤の分子を浸透させて、
分子間に架橋結合の反応を化学的に起こさせていく、ということを行う作業です。
こうなることで、コラーゲンの分子がどんどん結合、高次構造になっていくことで組織が安定化します。
この段階で、コラーゲンは親水性だったものが、疎水性になります。また革になると繊維組織間に
鞣剤が沈着しているので、革に充填性が増し、張りや、コシが生まれます。
ざっくり説明です。化学式は書きません。
とても難しいのは、目的とする革を作るために、各種の鞣剤を使い分ける必要があるということ。
鞣剤、方法によって同じ皮でも違う革になります。
今日はクロム鞣しについて。
クロム鞣しで出来る革の特徴は以下です。
①耐熱性が非常に増す。
②腐敗に強い。薬品にも抵抗性を示す。
③鞣した後繊維構造が大きく変化しない。=伸びにくい。ただ使用中に形状が馴染んでいく感覚は低い。
④柔軟性、弾力性に富む。=柔らかく成型しやすい。が、可塑性は低いので刻印等には向かない。
⑤酸性染料で良く染まる。
⑥有機酸で脱クロムが可能。
⑦植物タンニン、合成タンニンによる再鞣しができ、それにより革の性質を改変できる。
=コンビネーション(混ビ)鞣し革=グローブ革をつくることができる。
特に、革を購入される場合は③④は留意されると良いです。
クロム鞣しに関して、一つお伝えしたいことが。
革に使われるクロムは人体に有害ではありません。鞣し反応を起こすクロムは3価クロムというものです。
3価クロムは人体の必須栄養素として穀物、豆、キノコ類にも多く含まれています。
有害なクロムとして6価クロムがありますが、こちらは鞣し反応がないため鞣剤として用いることができません。
もし、革のクロムが有害だと考えていた方いらっしゃいましたら心配ありません。
鞣しの工程では、塩、酸の溶液に浸すことで、皮組織の膨張、収斂が行われ組織をよくほぐします。
その後、クロム硫酸塩を加えていきます。
PHを2~3の酸性に操作すると、分子が小さく浸透性の高い低電荷クロムが浸透していきます。
こうして分子間にイオン結合が起こってきます。
ついで、アルカリ添加してPHを上げていくと外液として残っているクロム錯体が皮内部まで浸透していき
今度は配位結合が進んでいきます。
またまたざっくり説明ですが、こんな操作をタイコ(という大きなドラム洗濯機で)数時間で行っていきます。
この工程の管理は、鞣剤濃度、PH、水温、ドラム回転数、等々諸条件を満たしていかなければなりません。
このように数時間鞣した後、今度は別の鞣剤(植物タンニンなど)を入れて1晩タイコ内にさらした場合は
混合なめし革になります。
最終的にホウ酸や重炭酸ナトリウムで中和して、クロム革は出来上がります。
クロム鞣しは短時間で革鞣しを管理できることが利点で、現代の製革の主流になっています。
また、クロム革は発色良くムラなく染色できるので、工業生産用の革としてたくさん生産されています。
私たちがお手頃な革製品を使用できるのは、この鞣しが発明されたおかげです。
クロム鞣しのことを調べていると、クロム原子が水酸基を作って錯体化(多核化)する・・・、
水素イオンを出してオール化、それが大きくなってオキソ化・・・、等々化学の知識のある方
なら分かる話かもしれませんが、・・・私文系なんでここまででお手上げです。
PHを駆使して金属イオン結合~配位結合を操作、コラーゲン組織に架橋を作る、ってとこでしょうか。
クロム鞣しの大きな特徴は、コラーゲン繊維架橋はとてもしっかりしているのですが、
繊維密度は緩やかなところです。
それが革の伸びにくさ、柔らかさにの割にしっかりした革という特徴に繋がっています。
また比較的に安価な革が多く、いわゆる生々しい革ではないのですが、生地はキズが少なく均一です。
効率的に一定品質の革を作るのに適した、優秀な革といえますね!
使い勝手が良い革だし、結構革包丁でも切りにくかったりする繊維しっかり感もあります。
去年こちらの革で機械端末のケースを作ったことがあります。
また最近では手提げカバン作成でご購入される方もいました・・・。
なんとなくでもクロム革の特徴がみなさんに伝わったら幸いです。
説明まだまだ下手ですいません。
次回は、タンニン鞣しについて書いていきます。
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鞣すということ、鞣剤の種類について。
みなさんこんにちは。
皮が革になっていく過程の話の続きをします。
改めて、なぜこういう話を長々すんのか。
革、は生き物の皮が、ありえないくらいたくさんのつながりの後にここにあるっていう、
そいうことをみなさんと意識したいからです。革づくりの工程を知れば知るほど、革が
いかに長旅で出来ていて、人々の経験や知識のかたまりだってことか分かってきます。
本来腐敗していくものに新しい命を付与していくのは大変難しい作業ですし。
革って、カッコいいとかおしゃれとかかわいいとか以前に、生々しいってことを知って頂きたいからです。
さて、今日は「鞣す」について。
「鞣」=「革」+「柔」です。この文字のつくりを見ると、昔の人が革づくりにどういう認識を持って
いたかイメージできます。
①一旦命を失って硬くなってしまった「皮」、に柔軟性を持たせ、生きていた時のようなしなやかさを
再度付与する、という意味。
ですが、製革の定義は、あと二つあります。
②皮に耐熱性を持たせること
③微生物に対する抵抗性を持たせること
です。はじめ生だった皮に、化学的または物理的操作を行い、実用的性能を付与していくと
上記の③点が実現されます。化学的に説明するなら、皮の準備段階で残ったコラーゲン繊維を、
様々な鞣し剤を用いて不可逆的に(元に戻らないように)安定させることです。
私が個人的にいつも感心するのは、鞣しの方法=鞣剤によって
革はそれぞれ個性的なしなやかさを持つということです。
鞣剤には天然、有機、合成、無機の様々な物質を使います。
天然では植物タンニン鞣剤。
これは自然界の有機物質です。タンニンはしぶとも言われるのですが、
様々な植物(樹木)の樹皮の皮、幹、枝、根、果実、葉、に含まれています。大昔はこれらの樹木から
煮だした溶液に皮を浸けて革を作りました。タンニンってポリフェノールっていう呼び方もできます。
あのワインとかにはいってるヤツ。口に入れるとキュッと口の中が締まる感じがしませんか?
収斂性(しゅうれんせい)というのですが、ポリ(いっぱい手があるという意味)フェノール分子は、
タンパク質と結びつきやすい性質があります。なので、コラーゲンとしっかり手をぎゅっと結びます。
タンニンがしっかり皮に入り込んでいくことで、タンニン+タンパク質(コラーゲン)+タンニン+コラーゲン・・・
ということになっていきます。
非常に乱暴な説明になりますが、一応はこんなしくみです。
植物タンニンに関してはまた詳しく書きます。
鉱物(無機)系では、クロム鞣剤、クロムみょうばん、アルミニウム鞣剤、ジルコニウム鞣剤、チタン鞣剤があります。
有機系では、上述の植物タンニン、アルデヒド鞣剤、油脂鞣剤、あと、各種合成鞣剤。
ここでちょっと、合成鞣剤の話。
人類が発展するとともに、皮革製品の消費が増大しました。長らく主流だった天然植物タンニンの需要が
拡大しました。つまりは、たくさんの樹木と生産の為の労働力が必要になってしまった、ということです。
一方、時期としてこれは第一次世界大戦~第二次世界大戦の時代にあたりました。
軍は軍需物資としても革製品をたくさん使いました。革製品として、軍事用に靴や鞄、その他各種の備品
を生産するにあたり、たくさんの革が必要になります。
当然鞣剤もたくさん必要です。いままで通り木を切って作っていたのでは間に合いません。
ので、増産の為に合成鞣剤の開発研究が発展しこの時期ピークを迎えました。
更に戦後、皮革製品の高付加価値化やファッション性の付加の観点から革の感覚的な品質改良が
進みそれに適した鞣剤が開発されました。その後は環境負荷をできるだけなくすことが、求められ・・・。
と、合成鞣剤は進化していっています。
人間の勝手で色々な鞣し方をして化学的生産もして、・・・とか私は別に言いたいわけではありません。
100%天然が正しいかも分かりません。ただ、そういう歴史や事実の結びつきの結果が革になったという
ことをお伝えしたいだけです。で、人によってそれが好きな革だったりそうではなかったり、というだけで
何が正しいかは特にないと思います。でも、ちょっと知っていると革を無駄には使えない気になります。
皆さんがヌメ革、所謂タンニン革を購入される際、ちょっと知っておくといいのが、合成タンニンのことです。
上述の理由で、化学生成された合成タンニンも開発されました。これは天然植物タンニンとは違います。
化学式的には同じ種類と分類できます。が、化学的に作り出されたものです。
天然みたくタンニン以外の色々な物質は入っていません。
それが、いいとか悪いとか、ではなく元の成り立ちの違いで、出来上がる革に違いがある、ということです。
概ね天然植物タンニン革は、硬く締まっていて張りコシの強い革、という印象。
対して合成タンニン革は、上記よりは少し柔らかく、適度な張りコシ、という印象。
天然=ベジタンって言われることがありますが、そう唱って販売されている革は厚みを
贅沢に使って、ベルトとかしっかり鞄とかヘヴィーな使い方をするのがいいのかな、と個人的には考えます。
薄く漉いて使ってもいいのですが、ちょっともったいない気もします。でも、別に正解はありません。
合成タンニンの場合、タンニン鞣しだから1ミリくらいに漉いてもある程度の固さが残り、
小物なんか作ってもしっかりした形状を保ったパーツが作れます。どっちも可塑性には優れているので
カーヴィングや刻印には適しています。
話が長くなってきましたので、鞣剤の話、今日はこの辺りまでにします。
次回はクロム鞣しの方法について書きます。
それでは。
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革の製造工程
みなさんこんにちは。
当社は昭和の11年頃の創業です。当時は原皮を仕入れて革の鞣しを行っていました。
写真の太鼓(という回転する大きなドラム式洗濯機のような設備)を使用していました。
その後、原皮の鞣しからの製革は行わなくなりました。
その代わりにタイコで再鞣し~染革を行うようになり、ランドセルが普及した時代は
黒、赤をタイコで染めていました。
今はスプレーガンによる染革が主となりましたので、タイコでの染革は行っていないのですが、
革の再鞣し時に使用します。
今日は、製革の工程について紹介します。
大きく工程を分けると、
①準備作業・・・水打ち、フレッシング、石灰づけ、脱毛、分割、垢だし、再石灰、脱灰、ベーチング
②鞣し作業・・・浸酸、鞣し、裏削り、中和、植物タンニン鞣しの場合は、ロッカー、レイヤー、レタンニング
とピット層で段々濃いタンニンピット層を経て、湯づけ。
③仕上げ作業・・・加脂、染色、伸長平滑化、加重、乳化剤処理、厚み処理、銀面処理、仕上げ剤塗布、
に分かれます。①②がどういう工程かは、結構謎が多いかと思いますが、私は小さいころ少しだけですが
、目にしていました。
当社はタンナーさんと比較すると本当に小規模なのですが、子供の目でも革を作るのは、
非常に重労働で、手間がかかり、かつ衛生的にあまり人がやりたくない仕事なのかな、と
感じていました。
今日はまず、①の準備作業について。
原料皮から革にするため、不要な組織や成分を、物理的機械的処理だけでなく、化学的作用を用いて
除去していくのがこの作業ですが、②以降の処理をしていくに当たり、薬剤や染料を均一に浸透させる
ために行う重要な前工程です。この工程で革の柔軟性、平滑性、またはシボ、に影響を及ぼし面積歩留り
も決まってきます。
大変な輸送工程を経てたどり着いた原皮はここから生まれ変わります。
1・水打ち・・・原料皮は輸送中に微生物が増殖するのを抑制するために、塩蔵、または乾燥処理されています。
水分の低下で皮は、収縮して固くなっているので、このままでは薬品の浸透が上手くいきません。吸水軟化
させて生皮に戻すのがこの工程です。水づけ浴槽には、塩溶液、皮に残った薬品、可溶性タンパク質、
皮に付着していた汚物、が溶け出します。溶層は微生物の繁殖に適した状態になります。と同時に皮は腐敗を
抑制する条件を失いますので、損傷を防ぐ処理がとても大切になります。
水分の浸透を進行させるために、各種ナトリウムを使用してPH値を高くします。pH値10以上でないと
細菌の繁殖がすすむため、アルカリ値を高く保つ管理が必要。また水温が高すぎても細菌が繁殖するので
20°を越えないように注意します。
いつもタイコを打つのは冬が多いです。
水打ちでは可溶性タンパク質を溶出させ、コラーゲン以外の不要なたんぱく質をできるだけ除去します。
薬品としてアルカリ剤やタンパク分解酵素を使います。
水づけの初期段階は水溶液がとても汚れます。防腐効果を失った皮は血液、糞尿などの付着物の
多い場合、腐敗が進行して細胞を損傷させます。水をしっかり入れ替えて低温を保ちつつ皮をしっかり洗浄
する必要があります。
2・フレッシング・・・皮の内面に剥皮の際残った肉塊、脂肪、皮下組織を除去する作業です。内側からの
薬品の浸透を均一にするための大切な工程です。不純物が残った場合その部分の革が硬くなって
しまうことがあります。
3.脱毛石灰づけ・・・石灰に浸ける、というとあまりイメージが湧かないかもしれません。石灰って水酸化カルシウム
のことです。雨の多いこの国では、畑をアルカリにするため灰を畑や田んぼにまいたりします。その灰ってやつ
ですが、ここでの水酸化カルシウムは強アルカリです。が、劇薬ではありません。豚コレラの防疫にも使用され
ます。最近は使われなくなったみたいですが、学校のラインマーカーに使用されていましたね。が、目に入ると
大変危険なので使用されなくなっているそうです。最近はアルカリ度の弱い炭酸カルシウムが使われています。
石灰につけることで、表皮組織を分解して、毛根部を緩め脱毛を促進します。また脂肪を融解させて加水分解
をすすめます。脱毛促進に海面活性剤や硫化ナトリウムも使われますが、環境負荷が高いため、酵素で脱毛
、または機械処理で脱毛を行う等、現代では各タンナーさんが水質汚染を起こさないように大変な努力をされ
ています。特に国内では排水に関して厳しい基準があり、エコレザー認定を受けるには、水質処理の設備が
ないと認定は受けられません。
4・分割・・・皮の厚みを調整します。薬剤の浸透が不均一になるとその後の製革の工程管理が困難になります。
製品になる前の皮でも分割(皮漉き)を行います。
5・垢だし・・・石灰づけあとの裸皮には毛根、脂肪、垢が残留しておりこれらは薬品の浸透を均一にしない
し銀面を汚すことになります。ので、機械を使って垢を圧出していきます。
6・再石灰づけ・・・一回の石灰づけだけでは、コラーゲン繊維の束はほぐれません。革に柔軟性を持たせる
ため再度石灰づけすることで繊維がほぐれます。革に柔軟性を与える重要な工程です。
7・脱灰・・・ここまでの工程で、皮は強いアルカリ性を帯びています。PH12以上です。鞣しは酸性域で行う
ため、このまま鞣しを行うと皮に負荷がかかりすぎて、生地に様々な障害が生まれますので一旦中和する
必要があります。PHを7から8程度に戻します。脱灰の酸として、ギ酸、塩酸、硫酸、酢酸、乳酸等が使用され
ます。その他アンモニウム塩なども使用されます。
ほんとうに革作りってどの工程でも、化学的処理が重要です。化学をある程度理解しないと、でたらめな
革作りになるので、私ももっと勉強します。
8・ベーチング・・・いにしえの時代から皮を鳥などの糞尿に浸けると、脱灰と同時に銀面に滑らかさが得られると
知られていました。これはアンモニウム塩中のタンパク質分解酵素のおかげです。現代では、化学的に生産
された各種ベーチング剤を使用します。皮に残っているケラチン、エラスチン等のタンパク質を消化させて、銀面
を平滑にしていきます。また、コラーゲン繊維にも作用して皮をより柔軟にしていきます。
いかがでしょうか?
原皮が運ばれるだけでも結構大変だったのですが、鞣し前の準備だけでも、大変な工程を経ています。
本格的な鞣しはこの後です。
まだまだ工程は続きます。
たくさんの困難を経て、本当に美しい革が出来るって、ほとんど奇跡ですね・・・。
続きはまた!
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皮から革になる時。
みなさんこんにちは。写真は多脂革の床革です。
銀革と分かれた床革を見ていつも不思議な気持ちになります。元々のこの5~6ミリの皮は
どうやって腐敗されないようにされて、こうやって丈夫な革になったのか。
今日はちょっと勉強したことを簡単にまとめてみます。なるべく簡単にまとめます。
実は製革の技術書は、ほとんどまるで化学の教科書みたいに見えます。
私は今のところ鞣しをする用意がないので、実際に実践する部分は再鞣し~加脂~染色~仕上げ
の部分ですが、その前のそもそもの皮の成分の理解で何をやったら欲しい革に加工できるかが決まります。
革で楽しんでお作りの方も、ちょっとだけ革の性質を知っていたら何が革にとって良いことか理解が深まる
かもしれません。
まず、皮(原皮)って何からできているの?ということから。
最初、ほとんどが水分で6~7割は水分です。残り、タンパク質、脂質、が多く、炭水化物と
無機物質が少し。生き物の身体の成分ということです。水分は必ずタンパク質と結合していて
腐敗しやすいです。
なので、革を作る前は原料皮を保存する処理が必要です。これをキュアリングというのですが、主な目的は
細菌、微生物の発生を抑え、タンパク質(コラーゲン)が変化しないようにして、製革工場まで、
輸送するためです。乾燥、という方法もありますが、塩蔵がもっとも一般的です。乾燥はその過程
で直射日光など、皮の劣化に繋がる問題がありますので、塩蔵が一般的です。
塩蔵と言っても色々な方法がありますが、大きく分けて散塩、塩水処理(ブラインキュアといいます)が
あります。前者の場合、塩斑という不要性のナトリウムによる銀面の劣化を招く場合がありますが、
後者は剥皮、洗浄、フレッシング(血液、肉片や脂肪分を除去する処理)、トリミング(皮の切り分け)、
から塩水に浸漬されます。これらの工程はと畜場の場所、輸送時間によるらしく、すべてが同じ条件
で行われているとは限らないようです。
皮はあくまで食肉産業の副産物であって業界全体の中では、このキュリングはビジネス的に見て
とても小さな一部という見られ方をされていますので、品質改善が見過ごされがちな環境にあることは
否定できません。
そんな中、良い状態で運ばれた皮は、非常に貴重な資源であるといえませんか?
話は変わります。
皮のほとんどはコラーゲンできているのですが、銀面の組織構造に多くあるのが、
エラスチンというタンパク質です。これは動脈や靭帯、結合組織に見られる弾性繊維を構成する
タンパク質です。真皮では乳頭層(銀面のあたり)~網状層にまであってコラーゲン繊維より細く
分岐した網状構造になっています。皮革製造ではコラーゲン以上に研究されているのかもしてません。
コラーゲンとかエラスチンとか、あとケラチン(毛)とかが、熱(温度)、水分量、化学物質とどういう
条件で反応するか、また理化学的な電荷、PH(アルカリ、酸)で組織がどんな変性を示すか、
そんなことが実験検証されて、輸送に生かされ、またその後の製革にも深く関わります。
現代では革は化学的な研究から出来た製品なんです。
私は文系人間なので、専門書の中で化学式や数値グラフが多くあるのを読解して、皮や革を科学的に
理解するのは結構やっかいです。が、経験的に人が革を作ってきたことをなんとなく理屈として、
革を染める時など、なんでそこで酸性にしたりアルカリ性にしたりする?など分かるとちょっと楽しいです。
また、そんな話もできたらと思います。
ところで、国内に入ってくる原皮ですが、その買付量は、北米からのものがほとんどです。
では、その輸入量が多い国は?1980年代までは日本が一番多かったのですが、その後
韓国、台湾が日本の輸入量を越えています。いろんな理由があるのでしょうが、原皮の品質基準への
要求が日本は厳しく、韓国、台湾はそこまでではなかったという話があります。
作る製品が同じではないので、はっきりわかりませんが、日本のタンナーさんが世界的に
結構評価されているのは、そんな原料調達からしっかりこだわっている姿勢があるからかもしれません。
ただ、原料皮が今後コロナウイルス後の世界で供給が今まで通りのままとは思えません。アメリカの食肉処理
施設では稼働が止まっているというニュースがありました。
原皮は国際的に流通する資源なので、日本だけの都合では取扱えません。革製品は長く大切に使う、
リメイクしつつ有効活用する、という姿勢も、将来的には必要になるのかもしれませんね・・・。
それでは!