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  • 染革の工程

    みなさんこんにちは。

    蒸し暑い季節になってきました。夏らしい明るい色で革を染めていきたいですね!

     

    キャメル色は、最近のランドセル定番カラーです。

    他ブラウン、ワインは定番のブラック、レッド、ネイビーに加えて飽きのこない長く

    愛用できる色として人気が高いですね。

     

    革の染色ですが、通常はドラム染色、またはハスペル(パドル)染色で行います。

    回転するの円形の大きな浴槽に革、染料、薬剤を投入して行いますが、まず、素材革のサンプルで

    色合わせを行います。過去の使用染料、薬剤、水、と革の重量、面積の比率でレシピを再現して

    通常は複数染料で調色して、小さく染色してみます。

    問題ないなら、大きく染めていきますが、目標色とのズレがある場合、染色作業にて補正します。

    同時に温度、PHを調整しながら行います。

    均染剤、吸着促進剤、などで革を処理してから染革を行う場合もあります。

     

    種々の革、染料で個別のレシピがあるのですが、大規模な製革工場でしたらカラーマッチングシステムで

    処方がコンピューターで自動化されています。

     

    染色{水溶液)温度なんですが、一般に温度が高いと染料の吸着は速くなります、が、

    不均一で表面的な染色になりやすいです。逆に温度が低いと染料はゆっくり深めに浸透します、が、

    染色の堅牢度は低めになります。

     

    染色後は有機酸等で染料の定着を行います。その後重要なのは、革をいったん水浴して表面に

    残っている染料を落とします。発色が良くなり、摩擦に対しても強い革になります。

     

    革を染めていくときどうしても無視できないのは、革は乾燥すると著しく色合いが変化していくことです。

    革を染めたことがある方なら、実感されているとは思います。

    染めていい感じと思っても、乾燥したら色が思ったより浅かったとか、逆に濃いかと

    思ったら、結構目標の色合いに近くなったとか。繊維の素材はそういう傾向はありますが、

    革は特に乾燥時と湿潤時の色変化が大きいです。

    乾燥時間が長いので、特に厚手の革の場合、色むら、色違いからの染め直しもします。

    革は繊維構造が複雑で不規則で多孔質なので、湿潤状態の場合、表面で光の

    乱反射が起こりやすいのが原因ですが、実は乾燥の方法による変化もあります。

    水分量の多い革を熱風で強制的に乾燥していくと繊維が締まりながらくっつきます。

    なので、色濃くなります。

    逆に繊維をほぐしながら段階的に乾燥すれば、色は淡くなっていきます。

    乾燥はこの後の工程で加脂を行った後にします。

     

    そんなこんなで、目標の色合いに達するために、データを横目に試行錯誤していきます。

    一応同質のヌメ革でも、ロットが違っている場合、鞣剤の残留濃度が多少違っていたりします。

    個体差のある自然のものなのでそういうブレはあります。そこで実績として記録してあるレシピを調整していくのが

    染革の仕事なのかもしれません。

     

    染革の工程の簡単な説明は上記なのですが、この後の加脂、仕上げ表面処理で、

    また革は違った色合いや表情を見せていきます。

     

    喜ぶのはまだ早い、といつも思います。

     

    流れとしては、素材革を、水洗→中和→染色~色の定着→水洗→加脂→水洗→乾燥

    なのですが、染色は浸透、上掛けと段階を踏む場合があったり、加脂を染色と一緒に行う場合もあります。

     

    革素材によって工程はそれぞれ違います。

     

    革をこのまま乾燥させると少し硬くなってしまいます。

    次回から、革をしなやかにするための加脂の工程についてご紹介します。

     

    それでは!

     

  • 酸性染料について。

    みなさんこんにちは。

     

    キャメル小さく染めた時の写真です。

     

    今日も染料の話です。

    皮革において一番重要なのは酸性染料です。使用されている大半の染料がこれに当たる

    からです。弱酸性溶液中で染色できることからこの名称で呼ばれていますが、

    以下に大きく分かれます。

    ①均染・浸透型・・・染料の吸じんを強くするため強めの酸性PH3~4位で色を吸じんさせて染色します。

    ベースとしてこちらを浸透、染着させて、

    ②表面染着型・・・こちらを使って色の表面濃度を高くします。PH5~6で染料を吸じんさせます。

    こちらは、湿潤状態では少し色落ちがおこります。

    両方を使って染色し、加脂をしたら、一度水洗い(ソービング=表面に残った色を落とします)

    その後、テンション乾燥します。

    他に③金属塩錯体染料、があります。含金染料ともいいます。耐光性、湿潤堅牢性はかなり高い染料です。

    色はそれぞれありますが、暗めの色調の染料で、金属塩がタンパク質と錯体を形成するのを利用しています。

     

    もう一つ、直接染料というのもあります。

     

    そのままで染着が強いものがありますが、多くは酸を添加することで安定化します。上記の酸性染料より

    色がハッキリしているものが多いのが特徴ですが、表面に色が入る、表面染着型の染料といえます。

     

    大体、①~②で染めていくのですが、②の工程では、塩基性染料を使うことがあります。

    クロム革には中性、タンニン革では酸性溶液を用意して染着させます。上掛け染料として

    使用して、こちらも特徴である発色の良さを出していきます。耐光性は弱いのですが、

    染めた時の発色はいいです。

     

    経年変化ですぐに色があせてくる場合はこの染料の可能性もあります。

    ただ、製品だけを見てどういう工程でその生地が出来たかを知るのは困難です・・・。

     

    他色々な性質の染料がありますが・・・、ほとんど上記の染料の製品(革)と考えていいかと思います。

    特徴的なものでは、ホルマリン鞣し後の鹿革で使う、建染染料があります。

    いわゆる藍染め、インジゴ染料として使われています。空気に触れないように丁寧に揺らして染めて

    その後空気にさらして酸化発色させるってのを繰り返します。

     

    個人的に興味あるのが、天然染料なのですが、植物から抽出した染料で、皮革用ではヘマチンといって

    ログウッドから得られる染料が有名です。鉄、チタンで媒染してちょっと青味の入った黒色になります。

    他にも天然染料はたくさんあります。

    ただ、革に色を定着させていくにはそれなりの量が必要になってきます。

     

    リクエストがありましたら小さく染めていくのを始めています、が、

    まだまだ修行中ではあります。

     

    みなさんのイメージを具現化できるようもっと練習しますね。

     

    それでは!

  • 皮革染料と革。

    みなさんこんにちは。

     

    革の染色について今日から書いていきます。

     

    まず大きくお伝えしたいのですが、染色とは染料を用いて色を繊維に染みこませていくことです。

    対して顔料による着色は革の表面に色を乗せることです。

    これは、工程としては仕上げ作業に属するものとして捉えることができます。

    顔料でもある程度革に色素は染みこんでいますが、染料と比較すると色が革表面に乗っているイメージです。

    染料では革の地の色が出やすいです。対して顔料はあまり地の色の影響を受けません。

     

    で、ここからしばらくは、「染料」による「染色」の話をしていきます。

     

    ここしばらく革繊維と鞣剤、の反応の話をしていたのですが、染色になって、今度は染料と革繊維の

    相互作用の話になってきます。革繊維と染料の間になんらかの結合が生じると「色が染まる」ということに

    なります・・・。

    なので、染色先になる革の特徴を理解しつつ、それに応じた染料を選択しなければ、革への浸透性、

    均染性、適度な濃度、色の堅牢性を持ち得ることはできません。

     

    染料は、種類は色でもちろん示されているのですが、同時に、化学構造、染色基質(染めるものの種類)

    染色方法、使用の目的なんかが明記されています。皮革用、というか、薬剤、染料業者さんに革素材に

    合う染料を提案してもらいます。染料の化学構造が基質の革と相性のよいものでなくては、染まりません。

     

    皮革染料の大半は、アニオン染料と言われるものです。アニオン?説明しますと、負に荷電したイオンの

    ことです。つまり陰イオンです。これに対して陽イオンはカチオンといいます。

     

    染色基質の革に関して。一般にクロム革は陽イオン基質です。タンニン革は陰イオン基質が強めです。

     

    陽イオンは電子を出す性質、陰イオンは電子を入れる性質を持ちます。

    つまりお互い結合しやすい性質を持ちます。

    ですから、クロム革はアニオン性、タンニン革はカチオン性染料との相性がいいのですが、

    タンニン革でも、クロム塩やアルミニウム塩で媒染処理(前処理としておきます)をしておくことで、

    染色が可能です。アニオン性酸性染料で染色する場合、この処理をします。

     

    このように、染色の為、革基質に処理を行うこともあります。アニオン染色は革の染色で、

    最も多く用いられる染色法で、酸性染料などの合成染料を用いて、色が濃く堅牢な染色が出来ます。

    カチオン染色は色調は鮮やかですが、日光堅牢度に弱い場合があります。こちらも合成染料が主流です。

    ちなみに合成染料って化学構造としてアゾ系って呼ばれていて、合成染料の大半がこの形状を持ちます。

     

    酸性染料はクロム革の染色に最も広く使用されています。

    皮革染料は、酸性染料、直接染料を含むアニオン染料が9割以上で、ほとんどが合成染料。

    染料を定着させのるに、どんな素材もそれなりの化学処理はなされているでしょう。

    革も同じ。

     

    今日はここまで。

    結構、細かくやっていますが、次回から酸性染料~ほかの染料についてもしくみを紹介していきますね!

     

  • 革の化学成分。

    みなさんこんにちは。

     

    革が化学的に何でできているか、考えたことありますか?

    染めたり削ったり切ったりする私の場合、うまくいかない事が多いので、理由を考えるのですが、革を眺めていても

    全然分かりません。なので、性質を知る必要があります。その辺りはタンナーさんに聞いたりするのですが、

    自分でも調べたり実験したりします。ちょっと面白い話としてご紹介できたらと思います。

     

    革は、ここまで書いてきたように、動物皮の真皮層繊維=コラーゲンの繊維状タンパク質の集まりです。

    で、このコラーゲン繊維の集合組織にタンニン、クロム等の鞣剤が結合したものが、ここまでの革です。

    その他に、水分、脂肪分、灰分、が含まれています。

    重要なのは、鞣した革は普通酸性であるということです。タンニン革でpH3.5~5.5、クロム革ではPH4.5~6

    くらいです。中性は通常PH6~8です。

     

    鞣した革は通常多量の酸が含まれています。同時に革表面は強いプラス電荷が働いています。

    分子はプラスばかり、マイナスばかりだとお互い反発してくっつきません。なので、電荷を中性に

    しなければなりません。分子が離れたりくっ付いたりして、染料、薬剤、油脂、仕上げ剤なんかが、革にちゃんと

    馴染んでいきます。

    染料の種類で、アニオン、カチオンとか言ったりしますが、これは陰イオン、陽イオンのことです。イオン結合を

    スムーズかつ均一にするために革成分を一旦中和すると後の工程が上手くいきます。

     

    そのままの場合、後から加えた染料やその他の物質が革表面にのみ沈着して、革の物理的

    性質、見た目に変化を起こしてしまいます。また革の繊維が硬く締まっているので、ほぐしておく必要も

    あります。

    そういう訳で、中和させるのです。要はちょっとアルカリ性に戻してあげることで、一旦革を柔らかくしたりして、

    染料、オイル、仕上げ剤が入りやすい状態に革をしてあげる、という作業です。

     

    通常は、炭酸水素ナトリウムとかギ酸カルシウムなんかの温和なアルカリ塩を中和剤として使用します。硬度の

    高い水は普通に洗うだけでかなり中和されるのですが、そうでない場合中和剤を使用します。製革工場の土地の

    水質によってその辺りの使い方は違ってきます。

    注意する必要があるのは、急激にアルカリ性にふらないことです。中和が過剰に進むと銀浮き

    といって銀面が網様層から剥離しやすくなるからです。

     

    ちょっと、生成り=素上げヌメ革をご購入されて染たい、という方々にお伝えですが、よく染める前に色が

    均一になるように少し水で塗らす、ということをされるということを聞きます。生成り革も色々あるので、

    すべての成分を調べているわけではないので、一概には言えないと思いますが、水で濡らして

    湿ったまま時間が経つと、革の毛穴が開いていきます。水道水は基準としてPH5.8~8.6くらい

    が安全値として定められていますが、実際測るとPH6~7位のものが多いです。ちょっとアルカリよりなのが

    蛇口からでてくる実際値のようです。ちなみに革の中和を行う際、PH7以上は銀浮きのリスクがあります・・・。

    ヌメ革の表面が鞣剤の影響で強めの酸性を残しているなら、場合によってはPH高めの水に反応して

    急に表面が緩んでしまい毛穴が開いてくる可能性があります。

     

    革に水分を含ませて染料をムラなく入れる、というより、急に濃い色で染めず、最初色を薄く作って

    丁寧にだんだん濃い色を染め重ねていく、と毛穴が開かずキレイにムラなく革が染まっていくかと思います。

    クラフト用だと、水性塩基性ってやつと、アルコール性っていう染料があります。アルコール性は

    水に不溶性なので手早く染めていかないとムラが生じやすいです。ただ、発色がいいし、日光に強いです。

    浸透性は低い染料ですが、はっきりした色合いがでます。浸透性は低いのですが、横への広がりは大きい

    です。ムラが出やすいとはそういうことですが、表面染着量が多いので色目はハッキリ出ます。

     

    製革では、最終的に色ムラを修正する仕上げ染料として上記を使用したりします。

     

    今日は話としては、革を化学的に中和することで、一旦性質をリセットする、という話をしました。

    革は比較的酸には強いです。出来上がっている生成りヌメ革は弱酸性です。急激にアルカリ性に動くと

    組織変容を起こします。その辺り、少し知っているといいと思います。

    要は、アルカリ溶剤系は、使わない革サンプル等で試すか、薄塗りしてちょっとづづテスト

    しつつ使うってのがセーフティーです。あとは、局部的に使う場合はいいのですが、広範囲に

    塗布していく場合、どのくらいの面積を一度に作業できるか検討して、塗布濃度を調整するといいでしょう。

     

    今日はこの辺りまでにします。

     

    それでは!