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  • 革の仕上げ方法色々。

    みなさんこんにちは。

     

    前回に続きまして、革の仕上げ色々、についてご紹介します。

    まずは、仕上げ剤、による分類。

     

    ・カゼイン仕上げ  カゼインって知っていますか?乳成分の主要タンパク質のことで、乳化剤、接着剤、

    などにも利用されていて、革の仕上げに古くから使われています。通常、天然系の仕上げ剤として、

    染料やワックス等と配合して革表面に塗布して使用。乾燥後に圧力、摩擦、熱を加えることで、艶を

    出します。革本来の銀面を活かすような仕上げです。

     

    ・水性ポリマー(バインダー)仕上げ  合成樹脂バインダーを使用して表面に塗膜を形成します。

    下塗り、中塗りにも使用して充填性、造膜性、耐摩擦性を向上させます。バインダー塗装をした後は、

    アイロン処理をして塗膜を均一化、平滑化させます。

    エマルジョン(微粒子が液体状に安定分散していること。乳濁液)タイプの仕上げ剤が多くなっています。

     

    ・ラッカー仕上げ  硝化綿を主成分とする仕上げ剤で塗膜を形成します。染色革の銀面に塗膜液を

    スプレーすることで革に光沢、耐水性を付与していきます。クリアラッカーは酢酸エチル、シンナー等で希釈

    して使用します。マット調仕上げも可能。耐水性、耐摩耗性に優れます。W/O型という油中水型はクリアラッカー

    よりもプラスチック感が少なく革の自然な風合いを活かした仕上がりが特徴です。

     

    ・ポリウレタン仕上げ  ポリウレタンによる仕上げで、ラッカーよりも強い塗膜を形成します。塗装後に

    塗膜中で反応が進行するので安定状態になるまで1週間くらい時間がかかる。仕上げ剤はシンナーなど

    の希釈剤と共に使用します。可塑剤なしで柔軟な塗膜形成が出来ます。エナメル仕上げ、椅子用の革に

    使用されることが多いです。

     

    ・水性ウレタン仕上げ  ポリウレタンは近年、水溶性のエマルションタイプのものが多く販売されています。

    下塗り、中塗りに使用されるが、耐水性、耐摩耗性、に優れ塗膜感をあまり感じさせない表面仕上げが

    可能になってきました。

     

    機械処理では、以下の仕上げがあります。

     

    ・摩擦(グレージング)仕上げ グレージングマシンでの仕上げ。レザークラフトでは、小さいガラス板で

    革の塗膜表面を摩擦するとツヤツヤする処理ありませんか?

    グレージングマシンをかけると摩擦、加圧で艶がでて、表面が緻密化、平滑化します。

    通常仕上げ剤はカゼイン、アルプミンなどのタンパク質系バインダーに牛血、ワックスなどを配合します。

     

    ・アイロン(プレス)仕上げ 革の仕上げで最も一般的な処理で、塗膜の艶出し、平滑処理を行います。

    加熱した平板に金属ロールで革を押し付けます。金属ロールが革に摩擦、圧力を加えてアイロンと同等の

    効果を与えます。革組織に影響の出ない60度くらいまでの温度でアイロン処理をします。

     

    このあたりの工程は種々の鞄、ケース類の革用に日々行っています。

     

    革で製品、作品を作る方がイメージする革を手に出来たらいいです。

    出来上がったモノにフォーカスが当たり、使う方が大切に使うには、自分がここで

    しっかりバトンを渡すことが大切です。

     

    精進します。

     

    それでは!

  • 製革の仕上げ作業って何するの?

    みなさんこんにちは。

     

    今日は革の仕上げについて。

     

    仕上げは、塗膜形成材料を用いて、革の表面に塗装、着色を施し、革の表面を保護しつつ

    その美観を高めることが目的です。

    塗装というと、木材や金属をイメージされるかもしれませんが、革の場合ほとんどが、製品になった

    とき人の肌に触れるので、風合い、手触り、充実感など、官能性と言われるニュアンスが重要になります。

     

    また、合成皮革、人工皮革が多くなった現代において、これらに対しての天然皮革、本革の

    「革らしさ」、「本物の革」、としての姿を求める傾向はますます高まっています。

    なので、天然皮革としての特性を失わない仕上げが要求されますが、天然の革を考えると

    銀面になんらかのキズ等があるのは、どうしても避けられません。

    こういうキズを隠しつつ、生かしつつ、革本来の良さを残していくのがポイントです。

     

    仕上げ方法は

    ①塗膜の透明度

    ②使用する仕上げ剤

    ③機械的な仕上げ操作で、分けられますが、

    今日は、塗膜の透明度による分類についてご紹介致します。

     

    1、アニリン仕上げ 塗膜透明度が一番高い仕上げ。革本来の銀面模様の特徴を生かした仕上げです。

    染色された革に透明な塗膜を形成させる仕上げです。カゼイン等のタンパク質系バインダーに合成樹脂等

    を調合した仕上げ液で塗膜を作ります。

    銀面の良い革が特に選ばれます。

     

    2・アニリン調仕上げ 塗膜の透明度はアニリン仕上げと同等ですが、銀面のキズ、染色ムラなどを、

    着色用の染料で修正してから、表面仕上げを行います。

     

    3・セミアニリン仕上げ アニリン仕上げとカバーリング仕上げの中間的な仕上げ。着色材として、染料

    と顔料を併用しつつ、銀面のキズを目立たなくしていきます。上塗りにクリア色、着色した被膜を用います。

    革表面の銀面模様も適当に残るようにします。

     

    4.カバーリング仕上げ 塗膜中に無機系顔料を主に使用して、革表面のキズや染色ムラを目立たなく

    します。塗膜の透明度は最も少ないです。

     

    塗膜透明度で分類したのが上記ですが、概ね塗膜透明度が高い仕上げは銀面がある程度キレイな

    革になります。クラフト用にも、アニリン仕上げの革はたくさんありますよね。

    当社はランドセル用の場合がほとんどなので、4のカバーリング仕上げを通常行います。

     

    当社に革を見に来て頂く方は、天然皮革の「革らしい革」を探す方が多いです。

    特に男性の方はそういう傾向があります。

    逆に女性の方は、生地の均一な美しさを求められているようです。

    みなさんがそうとは言えませんが。

     

    最近はカットしてヌメ革ご購入の方、染色のリクエストありましたら、少量で30デシとか50デシとか

    染めることがあります。当社設備では基本丘染めなのですが、自然な風合いのリクエストの場合、

    塗膜を出来るだけ薄くして仕上げます。

    最近の仕上げ剤は、薄い塗膜でも、耐水性、耐摩耗性がそれなりに優れています。

     

    まだまだ私は製革について試行錯誤、勉強が必要ですが、

    ちょっとでも皆さんのイメージする革を作るお手伝いが出来ましたらと考えています!

     

    次回も仕上げについて書いていきます。

    それでは!

  • 仕上げ工程の準備。

     

    みなさんこんにちは。

    ここまで、原皮~鞣し~染色、加脂、と工程をざっとご紹介してきました。

    やっとここから革が製品になっていく最終段階に入ります。

     

    が、ここでも準備作業から入ります。各工程でも、化学的、もしくは物理的準備作業を行わないと

    工程がスムーズに進まない為薬剤等を用いたりしてきました。仕上げ作業は主に物理的作業を

    丁寧に行っていきます。

     

    目的①②加脂剤、染料の固着を強化して、染色堅牢性、耐久性、柔軟性の向上を図る。同時に乾燥。

    ・・・革はもともと皮のときほぼ円筒形状の為、これを革として利用する場合、革を平板状に

    伸ばしてシワを伸ばす必要があります。その際水絞り、伸ばしの作業を行うことで、皮タンパク質の

    親水性が乏しくなります。同時に鞣剤、染料、加脂剤の塩基結合が強力になります。

    馬掛け(といいまして、木製の馬という道具に一晩濡れた革を掛けます)で、水分量7~8割

    水絞りで、5~6割、ガラ干し(自然乾燥)で水分量10~5%まで持っていきます。

     

    目的③革の柔軟化

    ・・・革に物理的負荷を加えて柔らかくします。加脂後も革は乾燥すると硬くなっていきます。

    一旦乾燥したら、味入れ(という革にすこし水分を含ませる作業)を行い、タイコに革を入れて

    そのまま回す、空うち、革を振る機械で、バタ振り、ステーキングマシンで、革を揉む、など

    仕上げる革の風合いを考慮して行います。

    繊維の打解、引っ張り、をするとき、乾燥したまま行うと革繊維が破壊されてしまうことがあるので、

    味入れの具合(大体3割くらいの水分量)は重要です。

     

    目的④革の平板化

    ・・・革の塗装を行うため、革を平らにセッティングします。網または板に革を張り付けて乾燥、平板化します。

     

    上記作業を、行った後仕上げ作業に入っていきます。

     

    皮~革って、濡らして、何かして、乾かして、を繰り返し行いながらだんだん仕上がっていきます。

    水分と繊維、各種薬剤、が最終的にいい感じのバランスで結合、あとはやっぱりなんらかの

    力を加えて伸ばしたりして革らしくなっていきます。仕上げの前工程、もやっぱり同じです。

     

    仕上げ工程は、色々な方法があって、多分みなさんが革をご購入されるとき聞く「○○仕上げ」

    なんかの話ができるかと思います。

    その辺りのご紹介ができたらと思います。

     

    また次回。

     

    それでは。

     

  • 製革の加脂工程

    みなさんこんにちは。

     

    しなやかな革、好きですか?

    適度なオイルを含み革の奥から光沢を放つ艶、そんな革で

    作りたいという方、多いです。

    革は色々あるし、そういう革ばかりがすべてではありませんが、

    革の最も革らしい姿はそこにあるのかもしれません。

    製造される大抵の革は色々な方法で、そんな姿を再現、体現する方向にあるのだと

    私は考えています。

     

    製革の工程では、加脂、という工程になります。

    今日は、ちょっとその話をしてみます。

     

    鞣し、染色までの革で、革は水に濡れた状態だと、繊維間に水が存在しているので、柔軟性が

    あります。が、乾燥すると繊維同志がくっついたり、繊維細胞が硬くなります。ですから、乾燥する前に

    それをあらかじめ防ぐような物質、つまり油剤、を入れておくと乾燥していっても革が硬くなりません。

    水分を油分に入れ替えるというイメージです。

    または、乾燥した革に油分を加えてあげます。

    乾燥後は繊維簡や革表面に油剤の膜が存在するので、繊維間の滑りが良くなり柔軟性が得られます。

    加えて、水、その他の物質(汚れ)に対して、多少の撥水性、防水性がアップします。

    また感触、艶、革の膨らみも得られます。

     

    なので、最終的に、革の革らしい機能性や美観を加える重要工程となります。

     

    方法は、革ヌメクラスト革のように乾燥している場合は、直接塗布する(引油)、濡れている場合は

    ドラム内で施す。という方法ですが、ドラム内で施す再は、液体油剤だけでなく、固形油脂を乳化させて

    油脂類の浴中で革に吸収させるという方法があります。

     

    ここでも、鞣剤、染料と同じで、電離性で加脂剤はジャンル分けされます。

     

    アニオン性・・・硫酸化油、スルホン油、リン酸油、等それぞれ化合物で色々あります。

    カチオン性・・・アンモニウム、アミノ化合物、種類多。

    その他は両方含む両性、非イオンのノニオン性、なんかがありますが、普通上記2種と併用されます。

     

    中性(生油)・・・植物油として、ひまし油、椰子油、パーム油、菜種油、落花生油、ホホバ油、等

    動物油として、陸の動物の牛脂、豚脂、ミンク脂等、海の動物、タラ、ニシン、イワシ、

    ワニ、オレンジラフィー(深海魚の仲間)、あとは鉱物油などあります。

    菜種油は姫路白なめし、イワシ油は国産ヌメ革に柔軟性を持たせるのに伝統的に使用されてきました。

     

    ヌメ革を色々オイルアップして試している方は多いと思います。製革用の油以外は、そもそも食品とか

    お化粧用なんで、目的が違っていたりするので、お試しになる際は、端切れなんかで試してから

    オイルアップするといいか思います。クラフト用レザーオイルなら大丈夫ですが、生成りヌメ革は

    色々な油でオイルアップするのには適しています。

    オイルはそれぞれ乾く時間や、浸透する速さが違うので、オイルを入れてから半日~1日経過させて

    銀面の様子やしなやかさの変化を見て、好みのオイルを使うと面白いですよ。

     

    個人的に面白いなあ、と思っているのは、ホホバ油、アルガン油、オレンジラフィー油とか

    化粧品で聞く名前が入った油ですが、基本製革には使いません。それらを含む製革用のモノを使います。

    大体が動物性油と植物性油がブレンドされたものです。

    線維摩擦を下げて相性良く油分を浸透させるには動物性、表面のコーティングには植物性が

    よく作用します。植物性の速乾性と浸透力を、相性のいい動物性で中和しつつあまり革に急激な変化を

    あたえないようにしているオイル、が製革用オイルかと思います。

     

    中性油は、革の風合いや物理的な性質に及ぼす影響が結構強いです。

    また匂いも残ります。とくに湿気の多い季節は、脂の匂いがする場合があります。

     

    物理的影響といいましたが・・・、加量が10パーセント(革の重さに対して)くらいを越えると繊維の

    強度が落ちていきますので、オイルの入れ過ぎは注意が必要です。

     

    通常加脂は染色工程のタイミングで行っていきます。

     

    これ以降、革の仕上げ、工程に入っていきますが、それはまた次回以降ということで。

     

    それでは。