2019年3月

  • ボックスレザーについて。

    皆さんこんにちは。

     

    いつもお世話になっている取引先のお客様に、

    上の写真の革を使用した部材を頻繁に提供しています。

     

    一般に「ボックスカーフ」とか「ボックス革」とか呼ばれている革です。

     

    「ボックスって?」と思われる方いらっしゃると思います。

    名前の由来は色々あるようですが、

    古くからの皮革業界の中では、「クツ用の革」という捉え方が多いです。

    この革を使用していたイギリスの靴屋さんが「ジョセフボックス」さん

    だったからという話を業界のベテラン聞にききましたが・・・、諸説あるみたいです。

     

    とにかく、カーフ(仔牛)革のクロム鞣しレザー、がこの革です。

     

    見た目、透明感があって、独特の奥行を感じます。

    紳士靴のあの感じです。

    が、その見た目よりも、クロム鞣しの利点として

     

    ・水分、汚れ、キズに強い。=多少の天候変化も気にせず使用できる。

    汚れてもサッと拭き取ればいい。

    キズがついても磨くことで十分リカバリーできる。

    ・経年変化をあまり感じない=革生地のクタクタ感や日焼けを年月が経ってもあまり感じない。

    ・柔らかいが、繊維が密=クロム鞣しなので、タンニン鞣しに比べ生地が柔らかく成形しやすい。

    クロム鞣しの場合、革の繊維はギュッとしまってくるので、破れにくいです。

     

    ザックリこんな特徴です。

    靴やケースカバーに使われる理由がなんとなく分かるでしょうか。

     

    この革って、特にプレスなんかしていると、やっぱりヌメ革と違って

    サクッとは型抜き出来ないんですね。

     

    繊維の締りがあるので、切れていない場合は、プレスの圧を上げます。

    手に持つと革のゴワゴワ感はないのに、結構強い。

    クロム鞣しの不思議を感じます。

     

    クラフトされるお客様から、時おり型抜きのご相談を頂きますが、

    特にこういった革の場合、手断ちは大変かなーとは感じます。

     

    機械、楽器、箱などのカバー、

    楽器屋さんからご要望のあるピアニカの持ち手にも

    使用します。

    キズに強く、生地は均一なので同規格量産品にも〇。

     

    規格品を作るメーカーさんはもちろん

    当社にお越しいただいたクラフトをされる方にも

    この革をご覧頂いています。

     

    どんな革でも、革は使い方。モノは使い方。

     

    作る方が、イメージするもの。

    使う方がリクエストしたいもの。

     

    自分の仕事はそのお手伝い。

     

    革を使う方に感謝。

    雨にも風にも負けないボックス革にも感謝です。

     

  • ベルト裁断と機械組み立て。

    こんにちは。

     

    先日かっこいいベルトをお作りのクラフトショップ様より、

    ヌメ革ベルト裁断のお仕事を頂きました。

     

    いつも本当にありがたいことです。お役に立てて感謝です。

    これが革を裁断する刃です。リング状です。こいつを・・・、

    こんな色んなサイズの鉄リング(ちょっと年季入ってますが)と組み合わせて、ベルト幅を作ります。リングは刃より若干小さいサイズです。

    一旦機械を分解。なかなか年季入った機器ですが、結構馬力あります。ベルト用厚革もしっかり切れます。

    組み立て中。

    オーダー通りの幅に切れるか、他のサンプル革で切ります。もし万が一サイズが合ってないなら、

     

    分解、作り直し!今回は大丈夫でした。

     

    お客様からお預かりした革。上質なベルトになるブランドレザーです。絶対きれいに仕上げます。

     

    無事成功です。

    サイズを変更して、次のベルト幅へ!

     

    とまあ、こんな感じです。

    機器の設定は3mm幅からあとはミリ単位で調整可能ですよ。

     

    ちょっと固目のヌメ革などはサックリ切れますが、柔らかい革だと

    若干寄れが発生するので、気を遣います。が、そこが腕の見せ所になります。

    ミシンと同じ要領で、リングの回転速度を革を眺めながら変化させます。

     

    以前、手断ちでベルトをお作りのクラフト作家さんからベルトを

    購入したことがあります。

     

    「俺の今できる技を、革に向かって気合を込めて、革包丁を一気に引く。」

     

    マジにかっこいい方で、生き様がベルトに表れていて、

    ホント、刀みたいなベルトでした。いや、刀でも差したくなるベルトです。

     

    機器を操作して一定規格をコツコツ作る当社ですが、でも、もちろん

    気持ちは同じものがあります。

    天然の革の場合、機器を使っても100%の部材一致は結構難しいの

    です。が、誤差を限りなく無くすことに気合をいれます。

     

    一点モノも規格モノもそれぞれの良さがあります。

     

    個人的には、ピシっと綺麗になっている中の、微妙な違い、ユラギに

    やすらぎを覚えるのですが・・・。

     

    さて、ランドセルのサンプルをどんどん作ろう。

     

    オーシャンブルーという色のランドセル用革サンプルです。

    こんな微妙な色合いの革で、最近の小学生は学校に行けるのかー。

    ウキウキしますね。桜の色に映えそうです。

     

    では。

  • 顔料仕上げの革について

    こんにちは。

     

    晴天の日は、染革日和です。本日、革を染めました。

     

    今回は染革でよく聞かれる、染料、顔料の違いについて、簡単に書きます。

    ①違い②メリット、デメリット  とごく簡単にいきます。

     

    ①染料と顔料の違い

    色を革に染み込ませる=染料

    色を革にのせる=顔料 となります。本当にざっくり分けるとこの違いです。

    ちなみに当社メインの顔料染めは、丘染め、といいます。

     

    革の地の色(革の表面の風合い)が残る=染料

    革を発色良く色でコーティングする=顔料 となります。

     

    染料は、色を染み込またもの、顔料は色を塗ったものというイメージですね。

    本当におおまかに分ければこういうことです。

     

    ②メリット、デメリット

    染料・・・革の風合い、経年変化が楽しめる。生地の良い比較的高価な革が使用される。

    が、キズ、シミに弱い。ある程度、手入れが必要。それを楽しむなら〇。

    顔料・・・水に強く。シミになりにくい。色落ち、キズの場合でもメンテナンスがきく。発色がいい。

    が、表面がのっぺりした印象になる。革の経年変化はあまり分からない。

     

    双方それぞれのメリットデメリットは表裏一体というか・・・、

    使用用途や製品(鞄等)を使う方の価値観により、メリットにもデメリットにもなるのだと思います。

     

    多少のキズやしわ、使いこむときのシミ、日焼け等含めてそれも良しと

    楽しみたい方、お手入れ含めて革を使いたい方は染料仕上げでしょうか。

     

    ランドセルのように雨に強く耐久性が必要な場合とか、発色いい色が好みの場合は、

    顔料仕上げといったところでしょうか。コストとしてはこちらの方が気楽に使える製品が多いですね。

     

     

    どちらもありだし、それは使う方の価値観で革を手にして

    頂くのが良いと思います。

    当社も実はかなり以前までは、染料による染革も行っていました。

     

    タイコという設備でこちらに革と染料を入れて回していました。

     

    ランドセル用の革が主になり顔料染めが中心になってからは、

    あまり稼働していませんが・・・、まあ、来て下さる皆様に

    珍しく見て頂くだけでも価値があります。

    今後しっかり活用するのも考えていますが。

     

    先日、床革に顔料仕上げした革を紹介させて頂きました。

    水分に弱い床革には顔料仕上げが良いのですが、

    こういった手軽に使えるものを、クラフトされる方にも安く提供できないかと

    思案しています。

    ハギレも当社では顔料仕上げして、小さな部分の鞄パーツにします。写真みたく。

    そんな感じで、欲しい方にお分けしますね。

     

    では。

  • 国内タンナーヌメ革欲しいだけ。でも、お取り置き。

     

    皆様こんにちは。

    だいぶ暖かくなってきましたね。プレーンなヌメ革の柔らかい色や質感は

    なんだか春を感じませんか?

    個人的にはそう感じます。ピンクっぽいていうか・・・。

     

    それはさておき、

    ヌメ革を見たい、購入を考えている、という個人のお客様からの

    お問い合わせが最近増えております。

    本当にありがたいことです。

     

    そもそも革の加工業者なので、革の種類は多くないです。

    が、国内タンナー様のヌメ革なら革の姿を見て、感じて頂ける形で販売できます。

    基本当社でご購入頂ければ、革漉き、裁断、の費用は頂いておりません。

    と、いうのは取引先の業者様も当社で革ご購入、加工してお届けする

    場合は、革漉き費用等は頂いていないからです。

     

    通常、革は問屋さんやタンナーさんなどから買うと10枚単位とか

    になりますが・・・、大量生産のメーカーさんじゃないと使用しきれないですよね。

     

    そこで、カットレザーとかありますが、個人的には革の本当の姿が見えづらくなると

    いうか・・・、魚の切り身を買う感じ?

    また、あまり切ってあっても、大きい生地がとれない。

     

    で、一頭丸ごとの革の半裁(左右、半身の革、それぞれ一枚)、クロップ(手足、頭部分を切って

    肩からお尻の方の良い部分を切り出した革、ヨーロッパレザーはこれ)、などが販売されていますね。

    また、それを半分ほどに切ったものなど。

     

    でも、お客様のお声で多いのが、「置く場所がない」「またたくさん買ったと怒られる(誰に?)」

    というお声です。

     

    私は、革全体の姿を見て、触って納得して頂き、そういう時間も含めて、お作りのものを

    イメージして買うのがいいと思います。

     

    なので、半裁、ご購入のお客さまで、ご希望なら当社でお預かりします。

    その後、「肩のあたり40センチ四方を2ミリで用意して下さい。」

    など、ご連絡頂けましたら、お取り置きの革からその部分のみ加工してご用意致します。

    残りは当社倉庫で、大切に保管させて頂きます。加工費なし。

     

    または、半裁は多いから、「この革のこの辺、40センチ四方だけ」というお客さま

    もOKです。その場合、カット後、その周辺の端切れ欲しい方には、格安でお分けしてます。

    当社のような加工場では、規格に合わないものは使用できない場合が多々あります。

    なので、お使い頂ける方に革をあげたいのです。

     

    今後は、A4などにカットしてある革も手軽で使いやすく、購入しやすいので、そういった革の

    ご提供も考えています。その場合、ベタ漉きで多様な厚みを選んで頂けるような形をとります。

    もう一つは、端切れ、床革もご希望ならお分けしたいと。

     

     

    せっかく使って頂けるなら、少しでも革の姿を感じられる方がいい。

    端切れは小物、床革は例えば練習用とか、芯材として、

    そういう使い方もありますね。

     

    ただ、床革は水分をよく吸うので、ご注意を。

     

    それでは!