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革の製造工程

みなさんこんにちは。

 

当社は昭和の11年頃の創業です。当時は原皮を仕入れて革の鞣しを行っていました。

写真の太鼓(という回転する大きなドラム式洗濯機のような設備)を使用していました。

その後、原皮の鞣しからの製革は行わなくなりました。

その代わりにタイコで再鞣し~染革を行うようになり、ランドセルが普及した時代は

黒、赤をタイコで染めていました。

今はスプレーガンによる染革が主となりましたので、タイコでの染革は行っていないのですが、

革の再鞣し時に使用します。

 

今日は、製革の工程について紹介します。

 

大きく工程を分けると、

①準備作業・・・水打ち、フレッシング、石灰づけ、脱毛、分割、垢だし、再石灰、脱灰、ベーチング

②鞣し作業・・・浸酸、鞣し、裏削り、中和、植物タンニン鞣しの場合は、ロッカー、レイヤー、レタンニング

とピット層で段々濃いタンニンピット層を経て、湯づけ。

③仕上げ作業・・・加脂、染色、伸長平滑化、加重、乳化剤処理、厚み処理、銀面処理、仕上げ剤塗布、

に分かれます。①②がどういう工程かは、結構謎が多いかと思いますが、私は小さいころ少しだけですが

、目にしていました。

当社はタンナーさんと比較すると本当に小規模なのですが、子供の目でも革を作るのは、

非常に重労働で、手間がかかり、かつ衛生的にあまり人がやりたくない仕事なのかな、と

感じていました。

 

今日はまず、①の準備作業について。

原料皮から革にするため、不要な組織や成分を、物理的機械的処理だけでなく、化学的作用を用いて

除去していくのがこの作業ですが、②以降の処理をしていくに当たり、薬剤や染料を均一に浸透させる

ために行う重要な前工程です。この工程で革の柔軟性、平滑性、またはシボ、に影響を及ぼし面積歩留り

も決まってきます。

 

大変な輸送工程を経てたどり着いた原皮はここから生まれ変わります。

 

1・水打ち・・・原料皮は輸送中に微生物が増殖するのを抑制するために、塩蔵、または乾燥処理されています。

水分の低下で皮は、収縮して固くなっているので、このままでは薬品の浸透が上手くいきません。吸水軟化

させて生皮に戻すのがこの工程です。水づけ浴槽には、塩溶液、皮に残った薬品、可溶性タンパク質、

皮に付着していた汚物、が溶け出します。溶層は微生物の繁殖に適した状態になります。と同時に皮は腐敗を

抑制する条件を失いますので、損傷を防ぐ処理がとても大切になります。

水分の浸透を進行させるために、各種ナトリウムを使用してPH値を高くします。pH値10以上でないと

細菌の繁殖がすすむため、アルカリ値を高く保つ管理が必要。また水温が高すぎても細菌が繁殖するので

20°を越えないように注意します。

 

いつもタイコを打つのは冬が多いです。

 

水打ちでは可溶性タンパク質を溶出させ、コラーゲン以外の不要なたんぱく質をできるだけ除去します。

薬品としてアルカリ剤やタンパク分解酵素を使います。

水づけの初期段階は水溶液がとても汚れます。防腐効果を失った皮は血液、糞尿などの付着物の

多い場合、腐敗が進行して細胞を損傷させます。水をしっかり入れ替えて低温を保ちつつ皮をしっかり洗浄

する必要があります。

 

2・フレッシング・・・皮の内面に剥皮の際残った肉塊、脂肪、皮下組織を除去する作業です。内側からの

薬品の浸透を均一にするための大切な工程です。不純物が残った場合その部分の革が硬くなって

しまうことがあります。

 

3.脱毛石灰づけ・・・石灰に浸ける、というとあまりイメージが湧かないかもしれません。石灰って水酸化カルシウム

のことです。雨の多いこの国では、畑をアルカリにするため灰を畑や田んぼにまいたりします。その灰ってやつ

ですが、ここでの水酸化カルシウムは強アルカリです。が、劇薬ではありません。豚コレラの防疫にも使用され

ます。最近は使われなくなったみたいですが、学校のラインマーカーに使用されていましたね。が、目に入ると

大変危険なので使用されなくなっているそうです。最近はアルカリ度の弱い炭酸カルシウムが使われています。

 

石灰につけることで、表皮組織を分解して、毛根部を緩め脱毛を促進します。また脂肪を融解させて加水分解

をすすめます。脱毛促進に海面活性剤や硫化ナトリウムも使われますが、環境負荷が高いため、酵素で脱毛

、または機械処理で脱毛を行う等、現代では各タンナーさんが水質汚染を起こさないように大変な努力をされ

ています。特に国内では排水に関して厳しい基準があり、エコレザー認定を受けるには、水質処理の設備が

ないと認定は受けられません。

 

4・分割・・・皮の厚みを調整します。薬剤の浸透が不均一になるとその後の製革の工程管理が困難になります。

製品になる前の皮でも分割(皮漉き)を行います。

 

5・垢だし・・・石灰づけあとの裸皮には毛根、脂肪、垢が残留しておりこれらは薬品の浸透を均一にしない

し銀面を汚すことになります。ので、機械を使って垢を圧出していきます。

 

6・再石灰づけ・・・一回の石灰づけだけでは、コラーゲン繊維の束はほぐれません。革に柔軟性を持たせる

ため再度石灰づけすることで繊維がほぐれます。革に柔軟性を与える重要な工程です。

 

7・脱灰・・・ここまでの工程で、皮は強いアルカリ性を帯びています。PH12以上です。鞣しは酸性域で行う

ため、このまま鞣しを行うと皮に負荷がかかりすぎて、生地に様々な障害が生まれますので一旦中和する

必要があります。PHを7から8程度に戻します。脱灰の酸として、ギ酸、塩酸、硫酸、酢酸、乳酸等が使用され

ます。その他アンモニウム塩なども使用されます。

ほんとうに革作りってどの工程でも、化学的処理が重要です。化学をある程度理解しないと、でたらめな

革作りになるので、私ももっと勉強します。

 

8・ベーチング・・・いにしえの時代から皮を鳥などの糞尿に浸けると、脱灰と同時に銀面に滑らかさが得られると

知られていました。これはアンモニウム塩中のタンパク質分解酵素のおかげです。現代では、化学的に生産

された各種ベーチング剤を使用します。皮に残っているケラチン、エラスチン等のタンパク質を消化させて、銀面

を平滑にしていきます。また、コラーゲン繊維にも作用して皮をより柔軟にしていきます。

 

いかがでしょうか?

 

原皮が運ばれるだけでも結構大変だったのですが、鞣し前の準備だけでも、大変な工程を経ています。

本格的な鞣しはこの後です。

 

まだまだ工程は続きます。

たくさんの困難を経て、本当に美しい革が出来るって、ほとんど奇跡ですね・・・。

 

続きはまた!