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皮から革になる時。
みなさんこんにちは。写真は多脂革の床革です。
銀革と分かれた床革を見ていつも不思議な気持ちになります。元々のこの5~6ミリの皮は
どうやって腐敗されないようにされて、こうやって丈夫な革になったのか。
今日はちょっと勉強したことを簡単にまとめてみます。なるべく簡単にまとめます。
実は製革の技術書は、ほとんどまるで化学の教科書みたいに見えます。
私は今のところ鞣しをする用意がないので、実際に実践する部分は再鞣し~加脂~染色~仕上げ
の部分ですが、その前のそもそもの皮の成分の理解で何をやったら欲しい革に加工できるかが決まります。
革で楽しんでお作りの方も、ちょっとだけ革の性質を知っていたら何が革にとって良いことか理解が深まる
かもしれません。
まず、皮(原皮)って何からできているの?ということから。
最初、ほとんどが水分で6~7割は水分です。残り、タンパク質、脂質、が多く、炭水化物と
無機物質が少し。生き物の身体の成分ということです。水分は必ずタンパク質と結合していて
腐敗しやすいです。
なので、革を作る前は原料皮を保存する処理が必要です。これをキュアリングというのですが、主な目的は
細菌、微生物の発生を抑え、タンパク質(コラーゲン)が変化しないようにして、製革工場まで、
輸送するためです。乾燥、という方法もありますが、塩蔵がもっとも一般的です。乾燥はその過程
で直射日光など、皮の劣化に繋がる問題がありますので、塩蔵が一般的です。
塩蔵と言っても色々な方法がありますが、大きく分けて散塩、塩水処理(ブラインキュアといいます)が
あります。前者の場合、塩斑という不要性のナトリウムによる銀面の劣化を招く場合がありますが、
後者は剥皮、洗浄、フレッシング(血液、肉片や脂肪分を除去する処理)、トリミング(皮の切り分け)、
から塩水に浸漬されます。これらの工程はと畜場の場所、輸送時間によるらしく、すべてが同じ条件
で行われているとは限らないようです。
皮はあくまで食肉産業の副産物であって業界全体の中では、このキュリングはビジネス的に見て
とても小さな一部という見られ方をされていますので、品質改善が見過ごされがちな環境にあることは
否定できません。
そんな中、良い状態で運ばれた皮は、非常に貴重な資源であるといえませんか?
話は変わります。
皮のほとんどはコラーゲンできているのですが、銀面の組織構造に多くあるのが、
エラスチンというタンパク質です。これは動脈や靭帯、結合組織に見られる弾性繊維を構成する
タンパク質です。真皮では乳頭層(銀面のあたり)~網状層にまであってコラーゲン繊維より細く
分岐した網状構造になっています。皮革製造ではコラーゲン以上に研究されているのかもしてません。
コラーゲンとかエラスチンとか、あとケラチン(毛)とかが、熱(温度)、水分量、化学物質とどういう
条件で反応するか、また理化学的な電荷、PH(アルカリ、酸)で組織がどんな変性を示すか、
そんなことが実験検証されて、輸送に生かされ、またその後の製革にも深く関わります。
現代では革は化学的な研究から出来た製品なんです。
私は文系人間なので、専門書の中で化学式や数値グラフが多くあるのを読解して、皮や革を科学的に
理解するのは結構やっかいです。が、経験的に人が革を作ってきたことをなんとなく理屈として、
革を染める時など、なんでそこで酸性にしたりアルカリ性にしたりする?など分かるとちょっと楽しいです。
また、そんな話もできたらと思います。
ところで、国内に入ってくる原皮ですが、その買付量は、北米からのものがほとんどです。
では、その輸入量が多い国は?1980年代までは日本が一番多かったのですが、その後
韓国、台湾が日本の輸入量を越えています。いろんな理由があるのでしょうが、原皮の品質基準への
要求が日本は厳しく、韓国、台湾はそこまでではなかったという話があります。
作る製品が同じではないので、はっきりわかりませんが、日本のタンナーさんが世界的に
結構評価されているのは、そんな原料調達からしっかりこだわっている姿勢があるからかもしれません。
ただ、原料皮が今後コロナウイルス後の世界で供給が今まで通りのままとは思えません。アメリカの食肉処理
施設では稼働が止まっているというニュースがありました。
原皮は国際的に流通する資源なので、日本だけの都合では取扱えません。革製品は長く大切に使う、
リメイクしつつ有効活用する、という姿勢も、将来的には必要になるのかもしれませんね・・・。
それでは!