ブログ
blog- HOME
- ブログ
- 新着情報
革の鞣し方、色々。
みなさんこんにちは。
写真は鹿の革です。薄いですがしっかりした繊維の革です。
前回まで、製革の鞣し工程で代表的な、クロム鞣し、植物タンニン鞣しについて書いてきました。
皮の鞣し方は他にもあって今日は、ちょっと簡単にそれぞれの方法をご紹介します。
①合成タンニン鞣し・・・鞣し剤の紹介の記事で、少し書きましたが、軍需物資の利用拡大で皮革製造
が大量になり植物タンニンの需要が追いつかないので、戦時中に合成タンニンが開発されたって話
覚えていらっしゃいますか?
合成タンニンは、そんなニーズから生み出された鞣剤ですが、実際はクロム、植物タンニン、その他の
鞣剤と一緒に使用されることが多いです。皮の鞣し目的はもちろんですが、革の品質改善、他の鞣剤の
助剤として用いられています。ヌメ革の例ですが、ピット漕とドラムを併用して鞣す場合があります。英国式
とかイタリア式とか、それぞれの国のタンナーさんの方法があり、日本のタンナーさんもその方法を
お手本にしていたりします。
準備段階で脱灰したら一旦ドラムで前鞣しをして、サスペンダーというピット漕につけ、その後また
ドラムで鞣していくという方法です。前鞣しで合成タンニンを助剤として使用することで、植物タンニンの
浸透を早めます。この方法でヌメ革の鞣しが一か月程度で可能になりました。
合成タンニンを単独で用いる場合では、白革製造があります。クロム鞣しのところで、少し書きましたが、
鞣す最初にピックルという工程があって、PHを3くらいに(酸性に)しています。浸酸、酸浸けともいいますが、
これを行ってからドラム内で合成タンニンを使って短時間で鞣していきます。PHを調整して合成タンニン剤の
浸透を促進、ドラムの回転を利用して、ヌメ革を短期間で製造する方法です。クロム鞣し的な工程を、合成
タンニン使用で行うイメージでしょうか。
②アルデヒド(ホルムアルデヒド、グルタルアルデヒドがあります)鞣し・・・主にキッド、シープ
(子ヤギ、ヒツジ)を原料とする、白や淡色の手袋用革の製造に用いられますが、
いずれも前鞣しか再鞣しに用いられます。ホルマリン鞣しは耐水性に劣ります。
が、面白いのは、グルタルアルデヒドは、耐水性、耐汗性、耐洗濯性を革に付与する効果があります。
ただ一方、革を黄色く変色させたり、引き裂きやすくさせたりする欠点があり、薬剤のメーカーが
それらを改善したグルタルアルデヒドを出しています。
③その他の金属鞣しとして・・・ジルコニウム鞣し、白い靴の甲革を作ります。アルミニウム(ミョウバン)鞣し、
主として毛皮や白革の製造に用いられます。これらは、非クロム系の鞣し革として、ウェットホワイト、と呼ばれ
ています。ちなみにクロム鞣しの革はそれに対して、ウェットブルー、といいます。薄い青色の革です。
④油鞣し・・・この方法では、セーム革が代表的です。セーム革は自動車清掃用の革やガラス磨き等によく
使われています。シカ、ヒツジ、ヤギの革を用いて、上記②のアルデヒド系鞣剤にタラ(魚の)脂を浸透させて
鞣します。油の不飽和脂肪酸が皮タンパク質と結合、吸着することで鞣しが行われます。機械的強度が弱い
柔らかい革ですが、耐洗濯性があるのが面白い特徴ですね。清掃用品として実は革に接していたという
ことです。
あと全く異なる方法ですが、日本古来の油鞣しの方法として、菜種油を使った「姫路白鞣し」もあります。
こちらについては、私個人的にとても興味がありますので、また勉強して皆さんに紹介したいです・・・。
そんなこんなで、色々鞣し方法をご紹介してきました。
鞣し作業が終わったら、一応、皮は革になっているのですが、そのまま革製品の材料になることは少ないです。
この後、革によっては染色、加脂、の工程に入ります。その後水絞りを行い、伸ばし、表面仕上げと製革は、
まだまだ続きます・・・。
一応ここまで行い、伸ばし、乾燥まで行った中間材料としての未仕上げの革を「クラストレザー」といいます。
一応、区分けとして貿易上は「鞣した皮」とされていて、まだ革製品ではありません。当社では、この段階の
皮→革を用いて加工、鞄等の材料製作を行います。
なので、こういう素上げ革を購入されてクラフトされる方は、場合によってはよりご自分の目的に沿った
方法で革を染めたり、表面仕上げしたりが可能です。イメージとしては、プレーンな生地から自分好みに
して製作するという感じ。
正直ここ以降も、革の化学的性質の知識が必要かと思いますが、もっと大事なのはやはり感性になってきます。
みなさんの作品を見せて頂くと、「それぞれが違って、それぞれがいいセンス」といつも思います。
そんな、みなさんのセンス、が発揮されるようなヒントをご紹介したりお手伝いしたり、をさせて頂けましたら
といつも思っています。
まだまだ、製革の話は続きます。それでは。