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革漉き、ベタ漉きはイメージ、操作、実験、検証、経験、本番。

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部材や生地の全面を漉いて(薄くして)厚みを調整することを、「ベタ漉き」といいいます。

また、5~8mmなど厚みのある革をスライスすることを「割り漉き(漉き割り)」といいます。

今日はその話です。

 

当社は、革製品を制作されているメーカーさん、特に鞄、楽器、刃物ケースなどが

多いですが、その他はスポーツ用品、工業用部材メーカーの業者様に、革を様々な形に加工して

お届けしています。

 

その際重要になるのが、革漉き、ベタ漉き、です。

 

ある程度たくさんのロット数を、短い時間で大量に漉くことが可能です。

また、半裁の様な大きな生地全体を1mm程度まで薄く漉くことも可能です。

機械はバンドマシンと言って、ベルト状の大型刃物が高速回転して、素材をスライスします。

 

ヘリ漉き、ヘリ下漉き、溝漉き、等他にも製品化するに辺り様々なバリエーションの

漉き方があります。こちらはテーブルサイズの革漉き機を職人さんが丁寧に漉きます。

当社にもありますが、当社メインはバンドマシンになります。

 

皆様ご存じの通り、革は厚みがありますので、例えば布のようにそのまま

縫ってしまうと、かなりの分厚さになります。と、いうか縫えませんね。厚すぎて。

通常、目打ちと言って縫い目の穴を開けてから糸を通します。

多くは工業用ミシンを使用しますが、やはり漉いていないと機器に負荷が

かかりすぎます。

 

ですから、特に天然皮革の場合、革漉きの工程は、

製品の見た目、加工効率からも、避けては通れない工程です。

 

まず大量に生地やパーツをベタ漉きしておいて、その後、部分漉きを行うのが

通例かと思います。

 

業者様から加工依頼はいつも頂きます。本当にありがたいことです。

そして、このところは、ハンドメイドのクラフトをされる方からもお仕事頂くことが

あります。

本当にありがとうございます。

 

量の多少に関しては、あまり気になさらずお声お掛け頂ければと思います。

私としては、「手で漉いてる」、「小型漉き機を駆使してやってます」、などお聞きして

「もっと早く当社があることをお知らせしておけば、そういうご苦労もなかったのに・・・」

という思いです。

 

 

とにかく、今日も革漉きです。

 

まず、革を広げ、生地見をて、全体を触って、「1.2t(mm)ならこうなるな。」

とイメージ。革の頭、首、背中、お尻、手足、の厚さや固さを手で確認します。

 

一旦、バンドナイフの各部分を調整して、ご希望厚を出せるように操作。

 

似た革質、厚さの革を用意して試し漉きします。

そして、機器調整、試し漉きを数回繰り返し、イメージ通りの革になるか

テスト、実験していきます。

 

ご希望厚になったら、加工させて頂く革のサンプルを漉いて、ピッタリになるか検証。

 

OKなら、そこで、本番、なのですが・・・、

 

革は、自然のものである以上、個体差があります。

生地が均一でなく、シワ、波ウチが当然あります。

機器の調整を素早く変化させるだけでなく、漉き機に入れる際の生地の

シワの伸ばし方、手の力の強弱、繊維の方向を考えた入れ方、

個体の革の部分部分の厚さを考慮して、ラフに漉いてから、漉きならす、とか・・・。

 

本当に短時間なのに、瞬間で判断して行動に移します。

職人の経験に裏打ちされた上での本番です。

 

間違えたらお客様の大切な革をキズつけてしまいます。

失敗は許されませんが・・・、イメージ通りの革になるのは最高です。

 

通常一回調整して、あとは同種の革を一気に漉いていきますが、

レザークラフトをされる方は、本当に色々な革をお持ちで、

見ているだけで、私は楽しくなります。が、革質、厚みのバリエーションが多い場合、

都度、機器の調整と本番に至るまでの試行錯誤が多くなるのは事実です・・・。

 

でも、「助かりました」と言って頂ければ、父も私もこれ以上のことはありません。

ニーズがあればおこたえしたいし、私もみなさんが楽しくなれるようなことが

出来ればいいな、と日々妄想しています。

 

 

写真は、定期的にベタ漉きご依頼頂くお客様からお預かりした革、の床革です。

 

厚い革を薄くすると、副産物として、床革(スライスされ残った革)が出ます。

こちらは、切れたり破れたりしなければ、お返ししています。

ご不用の際は、こちらで何かに再利用させて頂きます。

 

ヨーロッパレザー、きれいだなー。

でも、漉きは緊張する。当然か。

 

では。