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革の繊維について
みなさんこんにちは。
今日は、革の繊維について書いていきます。
当社は革製品のパーツやベルトを大量に作成します。ですから、半裁革のどこからパーツを切り出すか、
とっても気をつけます。
以下、特に大判の革を購入される方、パーツ作成時に革のどこを使っていくか迷われた際、
参考にして頂けましたらと思います。
ただ、皆さん作成時に手で触って張りやしなやかさを感じつつ作られているかとは思います。
革の難しいところは布などの素材とちがい、場所、部位によって繊維の密度がちがうことです。
均一で規則正しく、どこでも同じ厚み、繊維密度のパーツがとれるわけではありません。
そこがまた面白いところでもありますが。
動物には動きがあります。牛の生きていたときの姿を想像すると、イメージが湧きやすいです。
四足で立っていましたので、背中からお尻(バット、ベンズ)は引き締まって丈夫です。
お腹~脚(ベリー)はよく動くし重量もかかっているので柔らかく柔軟性があります。繊維は緩やかな結びつきです。
どこが一番厚みがあるのかというと、首(ネック)の部分です。ここは床面を見ると太い繊維の束が平行に
見られます。ただ、繊維の結びつきはあまり密ではないです。太い繊維の束が横にキレイに並んで
皮が厚くなっている印象です。動かしやすいのと、首をしっかり守るのがここの皮の役目だったのでしょう。
続いて肩(ショルダー)では、繊維の束は少し細くなります。ただ繊維の束自体の結びつきがしっかり
してきます。繊維束の密度が高まって、繊維の交錯が多くなりました。この部位は首より少し
伸びやすく柔軟です。肩をしっかり動かしていたのでしょうか。
そして背中~お尻(バット、ベンズ)ですが、繊維は太い繊維束、細い繊維束、両方がしっかり交錯して
線維の枝分かれが多く繊維密度が最も高い部位になります。動きが少なく固く締まった皮だった場所です。
厚みもしっかりしています。
お腹~脚(ベリー)は、繊維の束は交錯も少なく、繊維同志に間隔があるフワッとした軽い感触になります。
最もよく動き、柔軟性のある皮の場所ですが、繊維の方向は不規則でキズ等も多い場所です。
革はステアくらいまでの牛の場合、鞣した後で元厚は5~6ミリです。
カーフスキンの場合は、バット部分でも大体2~3ミリです。
大きい大人の牛の方は、革が厚く硬くなります。日焼け、キズ等も多いです。
そしてあまり意識しないかもしれませんが、繊維中の脂分は多めです。ヌメ革の場合それを感じます。
ただ、革の保管状態や革がいつからの在庫か、そして鞣しの際の加脂の状況にもよりますので
一概にはいえません。
仔牛の場合、薄く繊細な革になり、銀面のキズは少ないです。
当社は、ベルトや鞄の持ち手など、長い間負荷のかかるパーツは、繊維のしっかりした
背中の方の革を通常使います。まずその部分のパーツを先にカットします。
鞄のカブセ等は生地のキレイな部位を優先しますが、柔軟でありつつ、革が素直に曲がる方向を
考慮します。また、革が伸びないようにパーツが引っ張られる方向に対して繊維方向が交差する
ように裁断しますが、製品が出来る際、革の筋の方向で美観が損なわれないかも注意します。
色々な条件でどの状態を優先してパーツをカットするか迷うところだと思います。
が、すべてを満たすのはなかなか難しいところではありますので・・・、
どんなパーツでどんな出来上がりになっても、その革の個性だ、と考えるくらいが楽しいのでは?と私は思います。
さて、半裁で、カットして購入する場合、どの部位を購入するか迷うかと思います。
・ベルトや持ち手を作る時・・・背中の方を背に沿って長めに購入するのがおすすめですが、
大体の革屋さんは、その革のいい部分(バットとか)だけ購入されること自体
ダメという場合もあります。
その場合は、バットやベンズに最初からカットされている革をご購入されるのが
良いでしょう。
・トートバック等、鞄を作る時・・・作る作品の大きさにもよりますが、すべてしっかりした生地で行きたいなら
上記の、ベンズ、バットでカットされている革がいいでしょう。
が、コスト的に問題がある場合は、可能なら半裁革を背に垂直にカットして、
1/4~1/2等で購入するのもアリかと思います。
その場合、生地のしっかり具合では、お尻の方を多く含む革がしっかり
しています。多分こっちは比較的価格は高くなります。
個体差があるので可能なら実際革を触るのが良いのですが、ショルダー
方向の革の方が生地は柔軟です。価格は少し安くなるかもしれません。
持ち手部分は、背中の厚みと繊維密度がしっかりした部位、他のパーツは
その下の方の生地のキレイな部位、小さいパーツや裏地等はベリーの方の
革、この部位も使い方を工夫すれば味わいのあるパーツにできます。
大体の革屋さんは半裁からのカット販売をあまりしていないです。最初から部位別にカットしてあるか、半裁を
背中に対して垂直に短冊状にしたり、A4等規格の大きさにカットしてあったり(その場合部位は分かりにくですが)。
というのは、革はデシ(10㎝角)いくら、という販売方法なので、バット~ベンズの良い部位だけ買われてしまう
と、同じ価格でも後に品質の劣る部位ばかり残ってしまう場合があるからです。
なので、本当は半裁を一枚で購入すると革屋さんはホッとします。
が、そんな一枚もいらないよ、というのがクラフトされる方の現実かと思います。そしてなるべくお値打ちに革の
部位もある程度考慮、理解した上で購入できるならいいですよね・・・。と、私は思うのですが。
私は結構素人なので、その辺りをあんまり考えずお客さんの欲しいところだけをカットして売ってしまったり
するのですが、社長には怒られます。確かに残った部分を次に買うお客さんが、良い部分を選べないし、
値付けも同じ面積の場合でも最悪変化させる必要が出てきたりします。
のですが、ぶっちゃけ私は早いもん勝ちだと思っていますので、来られたお客さんがいたら、
とりあえず現状の在庫のヌメ革を見て頂いて好きなところを好きなだけどうぞ、っていうスタンスです。
でも、確かに運任せなところがありますので、これからもう少し在庫状況を公開したり、半裁カットでも、
部位やカット方法で、なんでこういう値段なのかある程度明示していこうかとは思います。
皆さんご理解いただけましたら幸いですが・・・、私はお客さんとお互いに話し合って合意して、作るものに
応じた必要十分な革をお値打ちにがホンネなところです。
ですから、まあ、結構その時ある革に、ご来社でも、電話でも、メールでも、巡り合った方が良い革の、
好きなところをゲットしていくのが実態です。多分、実は世の中の革屋さんの多くも、お客さんと信頼関係を
結びつつそんな感じなんでは?と考えています。
当社に関しては、漉きや染め裁断の加工もしていますので、ヌメ革から自分の革を作りたい方とは
よくお話をします。この革は、どこの部分からカットしてこの作品を作った、ということを話のネタにされる
方もいますので。
色々書きましたが、上記はあくまで指針で、革の使い方は作品や作り手さんによるし別に決まっているわけ
じゃありません。
あくまで、革は生きていた動物の皮だから、その体のどこかだったか、ということを理解したら
もっと作ることが楽しくなるんじゃないかな?と思ったので。
それでは!