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植物タンニン鞣し。

みなさんこんにちは。

 

写真は国内老舗タンナーさんからお分け頂いているザ・ヌメ革です。

 

今日は植物タンニン鞣しについて。

こちらのタンナーさんはピット漕での植物タンニン鞣しにこだわっていらっしゃいます。

 

植物から採ったある物質は、紀元前600年頃には地中海沿岸ですでに鞣剤として一般化していました。

ヘブライ人は脱毛した皮の染色を行おうとして、樹木の黒茶色いエキスを使いました。植物タンニンなめしの起源と

言われています。

植物からとった枝や葉、樹皮から出たエキス・・・、すべての植物界に存在する「渋」というものが、

皮を鞣す効果があることは、経験的に知られていました。

 

化学的にタンニンってものを説明すると「ポリフェノールを主成分とする混合物で、収斂性が強く、

その水溶液はタンパク質等と結合して不溶性の沈殿を生じさせる物質」というものです。

高いヴィンテージワインとか底のほうにオリがあったりするそうですが、物質としてはそれですね。

「ポリ」=「たくさん」という意味です。「フェノール」っていう物質は手(官能基)を一個持っていて、

こいつらがくっついていて手が何個かある物質をポリフェノールって言います。

大体の植物に入っています。

カテキン、アントシアニン、プルプミン等色々な形、種類があります。また化学の世界ですね。

 

で、そういったポリフェノールの中で、タンパク質にくっついて別の塊を作るのものがあります。

これがタンニンと呼ばれているものです。

タンニンはタンパク質などの有機化合物や金属イオンと結びついて複合体を作るポリフェノールのことです。

 

タンニンには大きく2種類あります。

①縮合型タンニン(カテコールタンニン)・・・酸や酵素で加水分解されない。イオン化せず水素結合する。

主な植物は、ミモザ、ケプラチョ、ガンビア、カテキュ(阿仙)等。阿仙は天然染料でも使用されています。

②加水分解型タンニン(ピロガロールタンニン)・・・酸、酵素で加水分解される。イオン化する。収斂性は

あまり強くない。

主な植物は、チェストナット、ミロバラン、ディビディビ、樫、等。

 

ただ、完全にそれぞれが分かれているわけではありません。各植物、①と②を併せ持っていることが、

ほんとんどで、①、②の特徴をよく示すので一応それぞれにカテゴライズされているだけです。

そのそれぞれの特徴を利用しつつ皮を鞣していくのですが、天然のタンニンに関してはまだまだ

分かっていないことが多いようです。例えばそれぞれのタンニンの分子構造が

植物体内で合成されたものなのか、エキスを抽出しているときに重合されたものなのか等、

結構謎がまだあります。

 

と、いうのは、天然ものの植物タンニンは多成分なので、すべてを分離して調べるのは困難な為です。

分子の世界でのタンニンと皮との反応はとても複雑なのですが、コラーゲン繊維との結びつき方としては、

①水素結合

②静電結合

③不溶化タンニンの繊維間への物理的沈着(=革に充填性を与えます)に分けられます。

この作用を植物タンニンでコントロールしていくことで皮が革になっていくのです。

 

タンニン剤を使う方法として、

収斂性の強い、ミモザ、ケプラチョ、中程度のチェストナット、弱いガンビア、ミロバラン、

などを使い分けてタンニン漕(皮を浸すプールです)に皮を浸けていきます。

これらのタンニン剤を使い分けることで同じヌメ革でも、タンナーさんの意図する個性を持った

ヌメ革が出来上がります。

 

鞣製作業は、3工程のプールに分かれます。それぞれプールに浸ける期間も違います。

上記の①~③を下記の場所で、タンニン剤を使い分けて行っていくイメージです。

長期間かけてじっくりタンニンを濃くしていきます。

①ロッカー・・・タンニン濃度が最も低い漕 5~7日

②レイヤー・・・中程度濃度の漕 40~50日

③レタン・・・一番濃度が高い漕、鞣剤の原液に近い 7~10日

タンニン液は③へ注入され、②、①へピット漕設備内を流れていきます。逆に皮は①~③へそれぞれの

期間を経て移動されます。

最後に、渋はき、という、エキス溶解漕での工程(1~2日)を経たのち皮は革へ生まれ変わっていきます。

 

という、ピット漕の場合、実に2~3か月かけて皮鞣しが行われています。

生き物がお肉になって、剥皮、防腐処理、保存輸送、洗浄、鞣し準備作業、からの長期間鞣し・・・、

ここまででも十分遥かな長旅に感じます・・・。

 

で、この後革によっては、再鞣し、染色、仕上げ、計量があってやっと出荷!

色々なカットなど加工があったりして革屋さんに革が来て・・・。

本当に長い繋がりの中の一部にしか自分の仕事がない、ということをやはり実感します。

 

この長旅を考えるなら・・・、

植物タンニン鞣しは結構な手間とコストがかかるから、と、他の鞣し方法を人々が考えるのは当然でしょう。

 

ところで、タンニン鞣しは、タイコでもっと短期間に行う方法もあったりします。

 

その辺りは次回以降、ご紹介してみようかと思います。

 

ああ、ヌメ革って実に有り難いです。