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革の化学成分。

みなさんこんにちは。

 

革が化学的に何でできているか、考えたことありますか?

染めたり削ったり切ったりする私の場合、うまくいかない事が多いので、理由を考えるのですが、革を眺めていても

全然分かりません。なので、性質を知る必要があります。その辺りはタンナーさんに聞いたりするのですが、

自分でも調べたり実験したりします。ちょっと面白い話としてご紹介できたらと思います。

 

革は、ここまで書いてきたように、動物皮の真皮層繊維=コラーゲンの繊維状タンパク質の集まりです。

で、このコラーゲン繊維の集合組織にタンニン、クロム等の鞣剤が結合したものが、ここまでの革です。

その他に、水分、脂肪分、灰分、が含まれています。

重要なのは、鞣した革は普通酸性であるということです。タンニン革でpH3.5~5.5、クロム革ではPH4.5~6

くらいです。中性は通常PH6~8です。

 

鞣した革は通常多量の酸が含まれています。同時に革表面は強いプラス電荷が働いています。

分子はプラスばかり、マイナスばかりだとお互い反発してくっつきません。なので、電荷を中性に

しなければなりません。分子が離れたりくっ付いたりして、染料、薬剤、油脂、仕上げ剤なんかが、革にちゃんと

馴染んでいきます。

染料の種類で、アニオン、カチオンとか言ったりしますが、これは陰イオン、陽イオンのことです。イオン結合を

スムーズかつ均一にするために革成分を一旦中和すると後の工程が上手くいきます。

 

そのままの場合、後から加えた染料やその他の物質が革表面にのみ沈着して、革の物理的

性質、見た目に変化を起こしてしまいます。また革の繊維が硬く締まっているので、ほぐしておく必要も

あります。

そういう訳で、中和させるのです。要はちょっとアルカリ性に戻してあげることで、一旦革を柔らかくしたりして、

染料、オイル、仕上げ剤が入りやすい状態に革をしてあげる、という作業です。

 

通常は、炭酸水素ナトリウムとかギ酸カルシウムなんかの温和なアルカリ塩を中和剤として使用します。硬度の

高い水は普通に洗うだけでかなり中和されるのですが、そうでない場合中和剤を使用します。製革工場の土地の

水質によってその辺りの使い方は違ってきます。

注意する必要があるのは、急激にアルカリ性にふらないことです。中和が過剰に進むと銀浮き

といって銀面が網様層から剥離しやすくなるからです。

 

ちょっと、生成り=素上げヌメ革をご購入されて染たい、という方々にお伝えですが、よく染める前に色が

均一になるように少し水で塗らす、ということをされるということを聞きます。生成り革も色々あるので、

すべての成分を調べているわけではないので、一概には言えないと思いますが、水で濡らして

湿ったまま時間が経つと、革の毛穴が開いていきます。水道水は基準としてPH5.8~8.6くらい

が安全値として定められていますが、実際測るとPH6~7位のものが多いです。ちょっとアルカリよりなのが

蛇口からでてくる実際値のようです。ちなみに革の中和を行う際、PH7以上は銀浮きのリスクがあります・・・。

ヌメ革の表面が鞣剤の影響で強めの酸性を残しているなら、場合によってはPH高めの水に反応して

急に表面が緩んでしまい毛穴が開いてくる可能性があります。

 

革に水分を含ませて染料をムラなく入れる、というより、急に濃い色で染めず、最初色を薄く作って

丁寧にだんだん濃い色を染め重ねていく、と毛穴が開かずキレイにムラなく革が染まっていくかと思います。

クラフト用だと、水性塩基性ってやつと、アルコール性っていう染料があります。アルコール性は

水に不溶性なので手早く染めていかないとムラが生じやすいです。ただ、発色がいいし、日光に強いです。

浸透性は低い染料ですが、はっきりした色合いがでます。浸透性は低いのですが、横への広がりは大きい

です。ムラが出やすいとはそういうことですが、表面染着量が多いので色目はハッキリ出ます。

 

製革では、最終的に色ムラを修正する仕上げ染料として上記を使用したりします。

 

今日は話としては、革を化学的に中和することで、一旦性質をリセットする、という話をしました。

革は比較的酸には強いです。出来上がっている生成りヌメ革は弱酸性です。急激にアルカリ性に動くと

組織変容を起こします。その辺り、少し知っているといいと思います。

要は、アルカリ溶剤系は、使わない革サンプル等で試すか、薄塗りしてちょっとづづテスト

しつつ使うってのがセーフティーです。あとは、局部的に使う場合はいいのですが、広範囲に

塗布していく場合、どのくらいの面積を一度に作業できるか検討して、塗布濃度を調整するといいでしょう。

 

今日はこの辺りまでにします。

 

それでは!