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再鞣しの意義について。

みなさんこんにちは。

写真は工場2階です。現在はあまり使用できていない場所ですが、

味のあるスペースとして活用することを計画中です。

以前はこちらで洗いをかけた革を、伸ばしたりしていました。

 

ところで今日は「再鞣」の話です。「さいなめし」?また鞣すの?という感じかもしれません。

 

再鞣は本来主になる鞣しに施す別の鞣し、つまり複合鞣しの意味なんですが、現代の製革では、

特別な仕上げの最初の第一段階目の工程として捉える必要があります。

 

革の品質、性能に対する市場のリクエストは時代と共にどんどん多様化してきました。

例えば、私が小学生の頃はランドセルの色は黒、赤、紺くらいでした。

が、今はどうでしょう?ランドセルのカラーバリエーションは驚くほど進化しましたよね?

また革製品全般を見ると、色だけでなく、ツヤ、シボ、型押し等質感も実に多種多様です。

ユニークな革を探して他にないような製品作りたい、というのはすべての作り手さんの願いです。

 

そういうニーズには単一の鞣し方法のみで革に変化をもたらすのは難しいです。

鞣し、は皮タンパク質の化学的安定化といった狭い意味ではなく、革の外観、繊維の理化学的性質に

変化を与えて目的の革を得る、という幅広い意味で捉える必要がでてきました。再鞣しで

やることをまとめると、以下です。

 

①画一的に大ロットで鞣された革を用途別に選別して、厚み調整をする。

②革の多様化を図り、高付加価値化していくにあたり、新しい特性を革に付与する。

つまり、伸び、柔軟性の物性改良、感触、膨らみ感の官能的品質向上、接着性などの加工特性を

革に付与していく。

③PH調整(中和)~染色、加脂から出来上がる最終製品の革の特徴を考慮して、革下地の準備をする。

④再鞣は、その後の中和~仕上げまでの工程において理化学的物理的影響を与えるものであるから、最適な

再鞣を行えば、革に掛かるストレスを軽減、耐久性のある良質な革質を保持できる。

 

すいません。ちょっと難しく書いてしまったかもしれません。

皮を完全な製品としての「革」にしていくにあたり、前回までの段階では皮タンパク質を安定化させたに過ぎません。

なので、ここからは種類別に枝分かれさせていく、というイメージです。

 

で、まずは、製品品種に分けるために革を選別します。

 

革の適正は、主に銀面(皮の表面)のキズ、肌の状態を外観検査します。

キズが少なく、良好なものは銀付き(フルグレーン)として、

そうでないものは型押しや銀摺り(ガラス張り、ともいいます)革になります。

コレクトグレインとも言われます。ガラスに張り付けて乾燥させてから表面をバフィング(削り、磨き)してから

塗装や生地貼り付け用の革になります。固い革は靴やランドセル、柔らかい革はハンドバックになったり

します。

 

この選別の適否で、出来上がる革の品質が左右されます。

銀面にキズが少ない革ならそのままその美しい銀面を生かした薄い染色、

キズがもし多いなら、銀面を磨いて滑らか仕上げ、キレイに塗装すれば、キレイなランドセル生地に使えます。

 

選別は最終製造への出発点となります。

 

選別された革は、裏削り(シェービング)されます。目的の革に到達するために、厚み、を調整します。

この段階のシェービングは、出来上がる革の厚さを考慮する必要があります。その後の再鞣しや染色、

加脂で革の厚みや密度は微妙に変化します。それらを考慮しつつシェービング調整します。

またシェービング、削ることで皮の重量は変わりますので、中和、再鞣し、染色、加脂、の重量に対しての

レシピが変化してしまいます。なので、薬剤類の計算基礎項目になりますので、その後の製革において

工程管理するときここがおかしいと、上手くいきません。

 

ただ、重量だけ気をつけてもダメです。厚みが違えば、薬剤や染料類の効果や浸透性が違ってしまう

ので、全重量と表面積の最適なバランスを計算します・・・。それは使う薬剤でも変わります。

皮の重量、面積、厚さ、密度、対して薬剤の量、水分量を管理、目的の革を得るためのレシピを使い分けます。

この辺りから当社業務の領域に入ってきます。中和、再鞣し、染色、加脂、仕上げ、と進んでいきます。

 

次回は、中和について。

 

中和?PH?普通レザークラフトなどでは意識しないことですが、個人の方がメーカーになっていく

昨今、クラスト革からの革作りにご興味ある方がいることに個人的には驚いています。それだけみなさんが、

生き物からの素材としての革に対して理解が深まっているのだと感じる今日この頃です。

ある程度下味がついて準備されたお肉で、料理するか、素のお肉からやってみるか、の違いですが、

どっちがいいかとか、その人それぞれです。個人的にどっちがいいかとかは特にないと思います。

 

ただ、素のお肉的素材なら、ある程度扱い方を知っていたほうが美味しくなります。

そんなことをこれからもお伝えしていきますね。

 

それでは。