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クロム鞣しについて。
みなさんこんにちは。
写真は黒クロム革です。
当社ではBOXレザーを取り扱っています。楽器ケース等に主に使いますが、他にも、靴、薄物の革製品
にも使う場合があります。
まず、鞣しですが、ごく簡単に言うと、準備作業でほぼ純化されたコラーゲン繊維間に鞣剤の分子を浸透させて、
分子間に架橋結合の反応を化学的に起こさせていく、ということを行う作業です。
こうなることで、コラーゲンの分子がどんどん結合、高次構造になっていくことで組織が安定化します。
この段階で、コラーゲンは親水性だったものが、疎水性になります。また革になると繊維組織間に
鞣剤が沈着しているので、革に充填性が増し、張りや、コシが生まれます。
ざっくり説明です。化学式は書きません。
とても難しいのは、目的とする革を作るために、各種の鞣剤を使い分ける必要があるということ。
鞣剤、方法によって同じ皮でも違う革になります。
今日はクロム鞣しについて。
クロム鞣しで出来る革の特徴は以下です。
①耐熱性が非常に増す。
②腐敗に強い。薬品にも抵抗性を示す。
③鞣した後繊維構造が大きく変化しない。=伸びにくい。ただ使用中に形状が馴染んでいく感覚は低い。
④柔軟性、弾力性に富む。=柔らかく成型しやすい。が、可塑性は低いので刻印等には向かない。
⑤酸性染料で良く染まる。
⑥有機酸で脱クロムが可能。
⑦植物タンニン、合成タンニンによる再鞣しができ、それにより革の性質を改変できる。
=コンビネーション(混ビ)鞣し革=グローブ革をつくることができる。
特に、革を購入される場合は③④は留意されると良いです。
クロム鞣しに関して、一つお伝えしたいことが。
革に使われるクロムは人体に有害ではありません。鞣し反応を起こすクロムは3価クロムというものです。
3価クロムは人体の必須栄養素として穀物、豆、キノコ類にも多く含まれています。
有害なクロムとして6価クロムがありますが、こちらは鞣し反応がないため鞣剤として用いることができません。
もし、革のクロムが有害だと考えていた方いらっしゃいましたら心配ありません。
鞣しの工程では、塩、酸の溶液に浸すことで、皮組織の膨張、収斂が行われ組織をよくほぐします。
その後、クロム硫酸塩を加えていきます。
PHを2~3の酸性に操作すると、分子が小さく浸透性の高い低電荷クロムが浸透していきます。
こうして分子間にイオン結合が起こってきます。
ついで、アルカリ添加してPHを上げていくと外液として残っているクロム錯体が皮内部まで浸透していき
今度は配位結合が進んでいきます。
またまたざっくり説明ですが、こんな操作をタイコ(という大きなドラム洗濯機で)数時間で行っていきます。
この工程の管理は、鞣剤濃度、PH、水温、ドラム回転数、等々諸条件を満たしていかなければなりません。
このように数時間鞣した後、今度は別の鞣剤(植物タンニンなど)を入れて1晩タイコ内にさらした場合は
混合なめし革になります。
最終的にホウ酸や重炭酸ナトリウムで中和して、クロム革は出来上がります。
クロム鞣しは短時間で革鞣しを管理できることが利点で、現代の製革の主流になっています。
また、クロム革は発色良くムラなく染色できるので、工業生産用の革としてたくさん生産されています。
私たちがお手頃な革製品を使用できるのは、この鞣しが発明されたおかげです。
クロム鞣しのことを調べていると、クロム原子が水酸基を作って錯体化(多核化)する・・・、
水素イオンを出してオール化、それが大きくなってオキソ化・・・、等々化学の知識のある方
なら分かる話かもしれませんが、・・・私文系なんでここまででお手上げです。
PHを駆使して金属イオン結合~配位結合を操作、コラーゲン組織に架橋を作る、ってとこでしょうか。
クロム鞣しの大きな特徴は、コラーゲン繊維架橋はとてもしっかりしているのですが、
繊維密度は緩やかなところです。
それが革の伸びにくさ、柔らかさにの割にしっかりした革という特徴に繋がっています。
また比較的に安価な革が多く、いわゆる生々しい革ではないのですが、生地はキズが少なく均一です。
効率的に一定品質の革を作るのに適した、優秀な革といえますね!
使い勝手が良い革だし、結構革包丁でも切りにくかったりする繊維しっかり感もあります。
去年こちらの革で機械端末のケースを作ったことがあります。
また最近では手提げカバン作成でご購入される方もいました・・・。
なんとなくでもクロム革の特徴がみなさんに伝わったら幸いです。
説明まだまだ下手ですいません。
次回は、タンニン鞣しについて書いていきます。